「資産運用にはこういう言葉があるんだ」
大きく出ちゃいましたけど心境はこんな感じ↓
「非時価加重インデックスキターー(゚∀゚)ーー!!イィィィヤッホォォォウ!(´∀`)」
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◆iシェアーズMSCI日本株最小分散ETF(1477)
連動指数:MSCI Japan Minimum Volatility Index(ex-REITs)
信託報酬:0.19%(税抜)
◆iシェアーズMSCIジャパン高配当利回りETF(1478)
連動指数:MSCI Japan High Dividend Yield Index
信託報酬:0.19%(税抜)
【考察】
最小シグマ、高配当インデックスの合理は過去に考察しており、待ち望んでいた指数です。非時価加重インデックスのキモは「シグマを制御することで相乗平均リターンのムダな消耗を抑制していること」と考えています。高配当の方もシグマの中心に存在する平均値を高く維持する点と、結果的にシグマの小さい要素を相対的に多く組み入れる点に合理性があると考えています。
「The MSCI Minimum Volatility Indexes are calculated by optimizing a parent MSCI Index by using an estimated security co-variance matrix to produce an index that has the lowest absolute volatility for a given set of constraints.」
「The Barra Open Optimizer determines the optimal solution, i.e. the portfolio with the lowest total risk, using an estimated security co-variance matrix under the applicable investment constraints.」
「共分散マトリクスを使ってシグマが最小になるように最適化する」と読み取れます。具体的にMSCIがどんなアルゴルで多変数の最小分散ウェイトを算出しているかまではわかりませんが、おそらく以下のような数式に基づいていると考えます。ウェイト解にマイナスが出たりする部分は何か制約条件を課して最適化していると思っています。
【①最小分散ウェイトの一般形】
ここで「とある条件下」において最小分散はシグマの関数である相乗平均リターンを最大化すると認識しています。以下は相乗平均を最大化する時のウェイトを考察したものです。
【②相乗平均最大ウェイトの一般形】
さらに「とある条件下」において最小分散はシグマの関数であるリバランスボーナス(以下リバボ)をも最大化すると認識しています。以下はリバボを最大化する時のウェイトを考察したものです。
【③リバランスボーナス最大ウェイトの一般形】
なお、②式の目的関数である相乗平均は以下のように相加平均とシグマの関数で表されると認識しています。
【④相乗平均および「リスクによるリターンの消失」の一般形】
個人的には右辺第二項を「消失リターン(相乗平均の喪失)」と定義しています。①の最小分散ウェイトはシグマ最小なので消失リターンも最小になることがわかります。
①と②、①と③の式から、②、③は①の後ろにボコッとデカい項がくっついているので最小分散と相乗平均最大、リバボ最大を満たすウェイトは一般的に一致しないことがわかります。しかし「とある条件下」として等シグマ等相関(等共分散)、等相加平均を仮定すれば、つまり大数近似では第二項がキャンセルされイコールウェイトが三者を同時に満たす解になると理解しています。換言すれば、イコールウェイトはこれらの式の共分散行列、相加平均ベクトルにおける要素を等しいと置いた時の近似ですので、正確には上記三式がイコールウェイトの厳密解になると考えています。
次に最小シグマ、最小消失リターン(相加平均ゼロの時の最大相乗平均)、最大リバランスボーナスのイメージをプロットしたいと思います。
【⑤最小シグマのイメージ(3資産/等共分散)】
【⑥最小消失リターンのイメージ(3資産/等共分散)】
【⑦最大リバランスボーナスのイメージ(3資産/等共分散)】
今回の最小分散インデックスは⑤の極値(図の底の部分)を求めようとしていると思います。特に⑥のプロットにおいて、最小分散(大数近似下ではイコールウェイト)はこの分布でリターンの喪失が最も小さい部分に該当します。逆にリスクが高いと端の点のようにリターンの損失が大きくなります。⑦のリバボは⑥の消失リターンの裏返しであることがグラフからも示されます。
相乗平均を蝕む要因であるシグマを極小化し、連続分布のピークを解析的に求めようとするミニマムボラティリティ、つまり非時価加重インデックスは合理的だと思います。考え方はミーン・バリアンスに「微分」の概念を追加したもの。このように理論的に極値を求め、インデックスを設計することは理にかなっていると考えます。
なおシグマ最小、消失リターン最小(相加平均ゼロの時の相乗平均最大)、リバランスボーナス最大を満たすウェイトが一般的(大数近似を仮定しない場合)に一致しないことをグラフにより確認しておきたいと思います。
【⑧シグマと消失リターンとリバランスボーナスとの関係(2資産/not等共分散)】
共分散に要素ごとの差がある場合、最小シグマ(最小消失リターン)を満たすウェイトは共分散行列に応じて偏りが生じます。また相乗平均最大も共分散の他に相加平均に応じてウェイトが変化します(このグラフは2資産とも相加平均ゼロとしているため消失リターンを表し、極値ウェイトは最小シグマと同じ)。しかしリバランスボーナスは少なくとも2資産の場合に常に均等配分が最大を満たすことがわかっています。個人的にはリバボのこの特性が特異でありおもしろいと感じる部分です。
【まとめ】
非時価は時価に対して相対的にアクティブに見えるかも知れませんが、時価加重が何も考えなさすぎなだけで、非時価加重は統計学に立脚した定量的な「判断」です。むしろ物事を判断するにおいて数学や統計を根拠とする客観的なロジックは、設計する上でも、組織の意思決定においても、さまざまな場面で当然の手続きであり、正統派な仕事の進め方と考えています。アクティブファンドのようなよくわからない理屈で時価加重を上回ろうとするものでもなく、論理的に行動しようとした結果にすぎないものと考えます。何も特別ではない。おそらく非時価インデックスにとっては時価インデックスをベンチマークとする認識もないのではないかと思います。
これが完全な受け身(パッシブ)である時価加重インデックスと、自律的に数学的合理性を求めにいく非時価加重インデックスの違いと考えています。
【今後について】
今回ブラックロックが出しましたけど、レターを見る限り残念ながらバンガードは期待できないようです(時価加重主義だから)。ただこの先コストは0.0何%でコストダウンの余地が厳しくなる中、インデックス投資が進化していくためには統計と非時価加重が有力な手段と思っています。今回の最小分散もシグマを制御することでリターンの消失を抑制し、コストと同等の効果を生み出しています。その幅はリバランスや課税等の必要なコストを差し引いてもコンマゼロ何パーセントより大きいと考えられます。
つまり「時価加重+低コスト」より「非時価加重ー諸経費+低コスト」の方が伸び代が大きいという考え方です。インデックス投資がさらに進化していこうとするならこのような考え方が必要だと個人的には思っています。もちろん、単に高いリターンを目的とするのではなく、「インデックス投資をロジカルに考えること」そのものが本質であることは言うまでもありません。
そういう意味では野村さんの「高配当イコールウェイトETF(1577)」がすでにありますが、この度ようやくMSCIの非時価加重インデックスシリーズ連動が設定されたことはインデックス投資にとって一つの大きな通過点と認識しています。
まずは売買コストや課税ロスなどを含めた実際の経費率、取引価格のカイリ、出来高に着目したいと思います。前例としてMSCIジャパン連動のETF(時価ですが)は先日繰上償還されたので正直なところこちらも心配です。
【余談ヨルダン】
JPX400とかファンダメンタルとかよくわからない「スマートベータ」はありましたが、やっと本当の「非時価加重インデックス」が設定されたことをうれしく思います(配当分配のあるETFですが)。ちなみに株屋的なものを「スマートベータ」、統計屋的なものを「非時価加重インデックス」とするのが良いと思います。個人的にこの程度のものをスマートと言ってしまう風潮がほんとイヤなんです。
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