個人的には、均等配分には以下の合理性が備わっていると考えています。
【均等配分の主たる合理性に関する考察】
→とある仮定におけるポテンシャル極小化の考察です。シグマで表せないサドンデスライクなリスク要因を包含できることから、n増ししつつ均等にするという思想の根拠となっています。
→外来ノイズに対する「等配分のロバスト性」のシミュレーションです。
→インデックス投資の「平均を求める」という意味を突き詰めたものです(市場平均ではなく相加平均を求める)。シグマ極小よりこちらの概念の方が重要と認識しています。
→無数の加重平均も対数正規分布し、無作為な重み付けに対する均等配分の平均値の確度の高さを裏付けとしています。
→時価とイコールウェイトが「共存」するための方法を模索した結果です。
→複利において相加平均そのものである均等配分が確率的にマイノリティであることを考察しています。
私のような「選択」という判断力の乏しい人間にとっては何らかの形であれ「数学的な裏付けが存在し、しかもシンプルで機械的なロジックを採用できること」が合理的であると考えています(というか数学が支えてくれるのは心強い)。
ただし同一確率分布(等シグマ等相関)の仮定はリーズナブルと捉える方もみえるでしょうし、「そんなことあるわけねえだろボケ」と受け取る方もいるでしょう。任意のシグマ、相関では等配分からズレてきます。均等が意味の無いものと考えるなら「
合成リスク最小配分の一般形」や「
有効フロンティアについてVI」で定式化したように数学にしたがってリスク最小やSR最大を求めればいいと思いますし、最適化の方法は他にもいろいろあると思います(例えば「
非時価加重ウェイトのまとめ」「
バニシング・フロンティア」)。なお、算出ウェイトがマイナスになる「解なし」が特定資産が統計的に不要であることを示すサインであると考えます。
【均等配分の必要性】
たしかにイコールウェイトには「使える銘柄・資産をすべて使え」というルールは無いです。任意のnで議論できる理屈です。ただし母集団の相加平均値を得たい場合はnを母集団のnに合わせる必要があります。母集団からn未満の要素mを取り出し等配分した場合はバラつきます。元の分布との関係はmに依存します(中心極限定理)。
ゆえに明らかにダメな要素は除外した上でイコールにすればよい。だから例えば高配当等金額のようなインデックスが結果を出しているのだと思います。インデックスの場合に小型株が多くなるという指摘も、規模別に数が均等になるように間引いた上でイコールにすればよい。選択を含むことが可能なのは「論理的なインデックスは必ずしも市場のベンチマークである必要は無い」と考えるからです。
また無リスク資産と呼ばれる現金等の存在を考慮すると「債券やリートなど資産特性やコスト上得策ではない資産の代わりにリスクの無いキャッシュを一つの資産クラスとしてウェイトに組み込めば良い」という考え方もありうると思います。要は「トータル」で考えること。現金は相関係数による加重平均以上のリスク低減効果を期待できませんが、シグマゼロの単純な加重平均であるため(リバランスボーナスは期待できますし)、無駄にリスクの高い資産を加えるより効率は高くなる場合もあると考えられます。
例えばシグマ20%に10%を加えて等分すれば多くの場合で単純平均の15%以下になります。一方シグマ20%と現金を等分すれば10%になります。もちろんリターン(相加平均)も加重平均されますので、「シグマによるリターンの消失」まで考慮した相乗平均やSR(シャープレシオ)が同等になるウェイト水準はリスクリターン平面で議論する必要があります。
インデックス投資ナイトの話をグラフで表現すると以下のようになると考えます。
【①分散が逆効果の例】
資産1(σ1=20%、r1=7%、g1=5%)、資産2(σ2=20%、r2=4%、g2=2%)の相関係数ごとの均等配分がL3、さらに現金(σ3=0%、r3=0%、g3=0%)との加重平均を原点を結ぶ線で表しています。そして資産1と現金との組み合わせがL1、その均等配分がL2となります。ここで2資産の相関が例えば0.7(緑)の場合、L2と相乗平均が同等(3%)となるのはσ=約13%でL2の10%より大きくなっています(同じリスクにするために現金比率を増やして相乗平均を低下させる必要がある)。
つまり不要な数の等配分は逆効果になる場合があることを示しています。
【②分散が効果的な例】
資産1(σ1=20%、r1=7%、g1=5%)、資産2(σ2=10%、r2=4%、g2=3.5%)の相関係数ごとの均等配分がL3、さらに現金(σ3=0%、r3=0%、g3=0%)との加重平均を原点を結ぶ線で表しています。そして資産1と現金との組み合わせがL1、その均等配分がL2となります。ここで2資産の相関がいずれの場合でも、L2と相乗平均が同等(3%)となるσはL2の10%より小さくなっています(同じリスクにするために現金比率を減らして相乗平均を向上させることができる)。
つまり構成要素の特性次第で等配分の是非は変わってくることを示しています。
上記の他に寄与率のニュートラル化による「サドンデス」的な変動への対応が均等配分の必要性であり、リスク低減が「サチる」までにまだ余地があることが「n増し」の必要性であると考えています。目的は両者とも「ロバストネス」の構築です。
私にも好き嫌いはありますし、グロ債など他国の借金まで積極的に肩代わりするつもりは無いです(国債発行するだけで時価が増えるとかどんな罰ゲームシステムだよ)。しかし統計的な意味がゼロではないことから均等配分に含めています(結果としてリスクリターンの数値もわるくはない)。換言すれば、「統計的な観点でしか資産運用を見ていない」ということであり、人間の主観や感情、そして債券やリートの必要性といった定量性に乏しい金融の論理は可能な限り排除したいと考えています。
もちろん資産クラスや指数ごとに内部の母数やシグマ特性は異なりますので、大数近似的な考え方は現実的には難しい部分もあり、万能ではないことは承知しています。このようなことから少なくともアセットアロケーションの等配分(n=小)とインデックスの等配分(n=大)は明確に分けて考える必要はあると思います。私もそれをあえて明示してこなかったところはあります。
【均等配分のn(数)に関する考察】
→合成リスクおよびリバランスボーナスのn依存
→重み付けと等配分のリスク収束の定量化
構成要素のnの大小で分散の応答が異なることを考察しています(例えば物理学の「プランクの黒体放射の式」が短波長側でウィーン領域、長波長側でレイリー・ジーンズ領域に遷移するのと似たようなイメージ)。
状況や立場に応じて良し悪しが変化することについて、
【均等配分の課題に関する考察】
→均等配分はコストが高くなる場合がある
→均等配分はリスクが高くなる場合がある
→均等配分は手間が増える場合がある
等において適宜等配分の懸念は述べてきたつもりですが、まさに今回のインデックス投資ナイトはその指摘だったのだと思います。特にグロ株(米国株)は今後も彼らの都合のいいように世界を動かしていくと思いますので、資産を選ぶというステップを挟み、そこに直感や時価、統計で重みを付けることもありだと思います(リーマンとか世界中に迷惑を振りまき、他国を踏み台にして自分らだけ先によみがえってますから)。
ただし「時価」を採用する場合は合理的である理由を数学的に証明する必要があるのではないかと考えます。定量的な根拠が無ければ「設計」はできないと思うからです。
また、インデックスの中身がロジカルであれば無理に資産数を増やしたり均等配分する必要も無いと考えています。私としてはコスト的な非合理性は承知で数学的な美しさと統計的な合理性の顕現を重視しています。
なお「eMAXIS8資産均等型」の統計的なおもしろさとして以下が挙げられると考えます。
【eMAXIS8資産均等型の統計的性質に関する考察】
→ツイストグラフからリスクの低減、消失リターン、相乗平均の改善を定量化
→リバランスボーナスの存在確認
→ウェイトの縛りはリスク維持とトータルリターンとのトレードオフになる可能性がある
→リバランスボーナスは「リスク低減の効率をリターンの概念で表したもの」と理解していますが、調べた中ではeMAXIS8が最も高い
まあ、これらの議論はeMAXIS8のような均等型に限らないですけど。
上記以外の考察も列挙しておきたいと思います。
【均等配分のその他の性質に関する考察】
→均等配分が平均値(相加平均)そのものであり、「中央値<平均値」となることの確認
→均等配分の時価に対する長期的な優位性は高い
→近似的にリスクを極小化する等配分はウラでリバランスボーナスをも極大化する
→リスクがサチることの裏返しでリバランスボーナスもサチる
→S&P500Equalのヒストは美しいと思います
→単なる均等配分以外の均等配分も考えられる
→高配当と等金額の成分分離
【まとめ】
議論が意味のあるものかどうかは結論に至る過程に定量性や論理性、客観性が存在するかどうかだと考えます。定性的な主張はロジックとして貧弱ですので、上記のようなバックグラウンドを考慮した上で均等配分やその他非時価加重インデックスを議論する必要があると思います。
【余談ヨルダン】
このブログを読んでくださる方も感じていただいていると思いますが、このブログは理論的な背景を考察しているだけで他人に推奨とか強制するような書き方はしていません。受け取り方や判断は個人の「裁量」という立場のもと、等配分のいいところも困ったところも述べているつもりです。誰にとっても「他人の結果なんてどうでもいいこと」なので、コストを最優先させるか理論の検証性を重視するか等々、自己の責任において自分の信じる道を進めばよいのではないかと思います。
ただこの業界はその判断を行う上で定量的な視点や考察がおろそかであり、定性的な「損得」に拘りすぎだと感じます。結果に多少バラツキは出ると思いますが、どれも期待値がプラスの運用をしているのですからあまり神経をすり減らしてまで執着する必要は無いと思います。それでも不安であればそれはインデックス投資や分散投資に期待しすぎか、欲張りすぎか、リスクまたは投資額が大きすぎるのではないかと思います。
あとこういう議論をする時にしばしば「どちらがいいか」という1か0の二者択一で決めつけようとする風潮があると思います。重要なのは物事を定量的に捉え、判断したことを「使い分けて」実践することだと考えます。それが難しいなら近似下でポテンシャルを極小化する「
困ったときの等配分」により落としどころを探せばよいと思います。
当然ながら上記のように現実的には万能ではない均等配分の合理性を自身の大切な財産で実験する義務や必然性は無いと思います。しかし背景に存在する統計ロジックを体現するのも資産運用の楽しみ方の一つだと考えています。
1. 無題
Rockyさんの記事を見てイコールウェイトインデックスのとりこになったものです(笑)
野村高配当70や配当貴族等(こっちはETNなので怖いところなのですが)にも投資してみました。
三菱UFJ国際投信のeMAXISプラスに低コスト日経225イコールウエイトインデックスでもできないかなぁと期待しています(笑)