ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第9版)P.253に「図2 主要な金融資産のリターン(1926~2005年)」という表があります。
昔読んだときに疑問に思ったのは、
①なぜ幾何平均(相乗平均)と算術平均(相加平均)の二種類のリターンが載っているのか
②なぜ幾何平均(相乗平均)と算術平均(相加平均)とで値が異なるのか
この点について本文には説明がありません。その後の考察からシグマで喰われるリターンの存在に気づきました。例えば配当や利子は相加平均と考えられます。それがシグマでバラついた後の相乗平均は相加平均より「σ^2/2」だけ小さくなる(対数正規分布)。我々が受けられる複利リターンは相乗平均なので、配当や利子がそれだけ侵食される(ただし期待値(平均値)は相加平均)。だから二種類のリターンが記載され、それらの値が異なると理解しています。
経時変化ver2.0で使用した2013年末の20年データから同じような表を作ってみます(月率から年率に換算。分布は月率のまま)。特に「相乗平均(g)」と「r-σ^2/2」がどれくらい一致するか確認します。
日本株(MSCI JAPAN) |
変化率の分布(月率) |
相乗平均(g) |
0.98% |
|
相加平均(r) |
2.69% |
標準偏差(σ) |
18.30% |
r-σ^2/2 |
1.02% |
グロ株(MSCI KOKUSAI) |
変化率の分布(月率) |
相乗平均(g) |
8.41% |
|
相加平均(r) |
10.49% |
標準偏差(σ) |
19.33% |
r-σ^2/2 |
8.63% |
新興株(MSCI EMERGING) |
変化率の分布(月率) |
相乗平均(g) |
5.38% |
|
相加平均(r) |
9.21% |
標準偏差(σ) |
26.22% |
r-σ^2/2 |
5.77% |
日本債(日興債券PI) |
変化率の分布(月率) |
相乗平均(g) |
2.58% |
|
相加平均(r) |
2.62% |
標準偏差(σ) |
2.81% |
r-σ^2/2 |
2.59% |
【考察】
「相乗平均(g)」と「r-σ^2/2」が良く一致しています。リスク(分散)とリターンが「等価」であると考えることができます。
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