リバランスのつづきです。

具体的に計算してみました。ただし諸般の事情で以下の3資産です。また、コストは考慮していますが、譲渡益20万円以下でも税金20%引かれる(厳しめ)、といったtmp的なver.0.0であることをご了承ください。

【対象資産】
新興株：MSCIエマージング・マーケット・インデックス(円)
グロ株：MSCIコクサイ・インデックス(円)
日本債：日興日本債券総合インデックス
（エマージングマーケットインデックスの開始日1987/12/末を1とする）

【sim条件】
・1987/12/末から2010/11/末までの月単位(276ヶ月)
・新興株60%、グロ株30%、日本債10%で毎月積立
・リバランス時は毎月積立の比率を変えてなるべく相殺（超える分は売却）
・売却時のコスト（信託財産留保額(新興株のみ0.3%)、税金(20%)）を考慮

【リバランス方針】
[A]ある資産の構成比がx%変動した場合にリターンを最大にするx
（例えばx=10ならば、新興株の構成比60%が54%以下か66%以上になった場合）
[B]ある資産が直近からyσ変動した場合にリターンを最大にするy
（例えばy=1ならば、新興株が前月から±1σ以上変動した場合。σは1987年から前月までの各資産における月間騰落率の標準偏差）
→「A∧B」の時、リバランス実行

【sim結果】
下図はインデックスとそれぞれのリバランス条件でのリターンの推移をプロットしたものです。最適リバランスは後で述べるようにx=35、y=2.5の条件です。



xとyを振って、①2010/11/末と②2000/12/末のリターンを取ったものが以下のプロットです。



①2010年までで見ると、x=60、y=2.5の"線"にピークがありそうです。しかも広い範囲でリバランスなし(80%)を上回っています。



②一方2000年までで見ると、x=10、y=2.5の"点"にしかピークがありません。しかもそれ以外の広い範囲でリバランスなし(46%)を下回っています。

2010年までではリバランスはかなり効果的ですが、2000年まででは必ずしもそうではないことがわかります。これはその時代ごとの相場の動き方に大きく依存していることが伺えます。

ソフトの描画性能の問題で上図には表示していませんが、最適解はどんな相場でも対応できる等のバランスを考慮してx=35、y=2.5としました。この時のリターンは以下の通りです。

①2010/11/末：113%（リバランスなし：80%）
②2000/12/末：54%（リバランスなし：46%）

また、2010/11/末までのリバランス回数を取ったものが以下のプロットです。



思いのほか回数は少なく、リターンが向上する有効な条件では23年間で10回に満たない程度です。最適解では5回でした。

【まとめ】
・リバランスはした方がよさそう
・構成比の変動では35%が最適
・直近からの変動では2.5σが最適
・頻度は少ない（構成比が積立(ドルコスト)によってある程度リカバーされるから?）
・頻度が多いとコスト負けする（積立での相殺は総額が大きくなるとあまり意味をなさない）

定性的にはオシロスコープのAトリガとBトリガの関係です。じわじわと構成比が変化して35%に達しても、直近から一気に2.5σ変動するまではクリップしておく、というイメージです。逆に言えば構成比に関わらず直近から2.5σ変動すればよい、ということですが…。

また、トリガは基本的にバブルか暴落です。予めルールの決められたリバランスによってリターンが向上するチャンスだとわかっていれば、その時も冷静に対応できるのではないでしょうか。

筆者は構成比の変動35%と直近からの変動2.5σのハイブリッド・リバランスでいきたいと思います。

なお、期間を決めた定期リバランスはあまりうまくいきませんでした。時間分散(積立)でそのリスクを取っていることもあるので採用しないことにします。

【その他】
リターンについて、最初にドカッと入れるのと積立とを比較すると、前者458%、後者80％（どちらもリバランスなし）です。時間分散で述べたように、これが積立のデメリットです。（23年前に23年分は用意できないので…）