※今回はこれまでの理屈に少々水を差す内容です。
インデックスや資産配分に必要な「n」について考えます。
「n」とは「数(number)」のことです。ふとこんなことを思いました。
「等金額インデックスである野村高配当70ETF(1577)が70銘柄なのはなぜか」
考えられることとして、
①高配当と呼べる銘柄がそのくらいなのか
②コストやオペレーション的に運用しやすい数なのか
③統計的にこれ以上の分散は意味がないのか
特に③について考察します。先日「n資産均等型のノイズキャンセル効果」を確認しました。またそれ以前にも「n資産均等型のノイズリダクション効果」を確認しました。それらをもう一度登場させます。
【n資産均等型のノイズキャンセル効果((σ^2)/2で規格化)】
【n資産均等型のノイズリダクション効果(σで規格化)】
合成後の「(σ^2)/2」や「σ」がnに応じてどう変化するかを正規化して表したものです。単体のσを一定とし、相関係数が互いに等しいとしてその値を-1から1まで振っています。両者は言っていることは同じで、シグマが減ればリターンのロス(消失リターン)も減るという表裏一体の関係を示しています。
グラフを見ると、例えば相関係数r=0.7ではn=30、r=0.3でn=70、r=0でもn=100程度あると傾きが非常に緩やかになります。またrの大きさによって漸近線の高さが変わってきます。このように現実的な相関ではn=70前後でリスク低減およびリバランスボーナスが「サチる」ことになります(サチる(saturation:飽和)という言葉は検出器やセンサーのDレンジを超える場合によく使うと思います)。この時のしきい値としては数学的には式を微分してnに対する応答が1/eくらいになるところをn0とでも定義すればいいと思います。
おそらく、この統計的な事象を考慮して「野村日本株高配当70」という指数の銘柄数を決定したのではないかと推測します。
そしてここで思ったことです。
「インデックスが1000を超えるような銘柄数になってくると、たとえ時価加重で"実効的なn"が減少するとしても、相関係数で律速しているためシグマがサチるにはすでに充分なnがあるのではないか」
最近は「リスク」に占める「ランダムリスク」はごくわずかであって、市場心理である「システマティックリスク」が支配的ではないかと考えています。そのシステマティックリスクは相関係数に埋め込むことができるのを以前確認しているので、相関が0というのは考えにくく、平均的に0.5~0.7くらいを見込むのがリーズナブルではないか。そうすると現実問題として「分散で消せるリスク」は上のグラフの通り思うように減らないということになります。
つまり、インデックスについてはイコールウェイトでも時価加重でも「どうだっていいじゃん、コストが低ければ。」ということになります。それに対して資産配分における資産数についてはまだn増しによるリスク低減の余地があると考えます。
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