インデックス投資において「コスト」が重要と言われますが、具体的にどのような影響として現れるかを定量的に確認します。
モーニングスターのファンド検索から2014/12/E時点の経費率(実質コスト)、リターン(3年年率)、標準偏差(3年年率)を取得し相関取りします。DCファンドとETFを含みます。プロットは横軸に経費率、縦軸にリターン、Z軸(カラー)に標準偏差を取ります。縦横ともレンジを2%としています。数式は近似線の関数です。
【日本株(TOPIX)】y=-1.29x+27.18(n=55)
【グロ株(MSCIコクサイ)】y=-1.31x+35.45(n=33)
【新興株(MSCIエマージング)】y=-1.01x+20.46(n=9)
【結果と考察】
多少のバラツキはあれど、だいたいどれも傾き「-1」の直線に乗っていて、実績とコストに一対一の対応関係があることがわかります。つまり、「コストがx%異なると、あるバラツキをもってリターンに年率x%の影響を与える」ということがインデックスファンドの実績として確認できます。
ここで言う「あるバラツキ」とは主にポートフォリオ(運用手法)や現金比率などの違いによるトラッキングエラーや信託財産留保額の効果だと考えています。
なお近似線からのバラツキ(同じ経費率におけるリターンのブレ幅)は1σ(68%)で以下の通りです。日本株:0.10%、グロ株:0.089%、新興株:0.13%。経費率が同等でも実績はこれくらいバラつくということになります。
【その他の疑問、考察】
メインテーマは以上になりますが、「だいたい」と書いたように日本株とグロ株の傾きが「-1」にならないことが気になります(この図で斜め45度になるはず)。「-1.3」ということは経費率が高いほど実績がより低下するセンスです。
この傾きを決めるシステマティックな要因って他にありますかね?運用手法などのトラッキングエラーは傾きではなく相関の「バラツキ」として現れるはずです。
ひとつはリターンが3年年率であるのに対して経費率を直近の決算分(モーニングスターの「実際の経費率」という値)で代用している点。時間的なズレが影響を与える可能性はあると思います(ただし1年リターンで確認しても同様の傾向アリ)。あるいはこの3年間はリターンが出木杉君なので経費率の差が複利でエンハンスされている?
また、点の色に着目すると同じ経費率でも高シグマほど実績が高めの傾向があり、消失リターン「-(σ^2)/2」と矛盾しているように見えます。恐らくこれは同じ指数のファンド間の関係においては現金比率(w)の影響の方が大きいためと考えています。正確には標準偏差(σ)、相加平均(r)を変数として「r=(2-w)×(σ^2)/2」で分岐点が決まると考えます。ゆえに条件によってはシグマに対して逆の傾向になることが想定されます。
他にはグロ株の相関に比べて日本株が割とバラついているのも引っかかります(母数は異なります)。あと新興株は経費率1.3%の点のおかげで直線が引けていますがかなり危ういです。経費率0.5%くらいの新興株インデックスファンドを出してもらえると線を引きやすくなるのでよろしくお願い致します(^^)
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