リバランスの確率分布をシミュレートしたいと思います。第一弾は期間を定めた定期リバランスを考えます。
【方針】
全体の期間を20年とし、1年、5年、10年のスパンでポートフォリオを平準化します。ポートフォリオは4資産の均等型でそれぞれのリスクリターンは異ならせています。リファレンスはリバランスなしとします。
(確率分布乱数)
関数型:ガウシアン80%+ローレンツ関数20%(定義域:r±5σ)
資産1 相加平均:年率6%、シグマ:年率20%
資産2 相加平均:年率5%、シグマ:年率15%
資産3 相加平均:年率4%、シグマ:年率10%
資産4 相加平均:年率1%、シグマ:年率2%
期間:240ヶ月(20年)
周期:12ヶ月(1年)、60ヶ月(5年)、120ヶ月(10年)
試行回数:4096回
※コスト、課税は考慮しない
【結果】
リファレンスに対する分布を確認します。まず横軸にリファレンス、縦軸にリバランスとして資産総額の相関プロットを示します。Z軸(カラー)には平準化のタイムスケールを取っています。色のついた線は直線近似、白い線は1:1対応を表します。
◆資産総額の相関プロット
タイムスケールが短いほど傾きが小さくなることがわかります。
◆資産総額のヒストグラム
中央値(累積50%時のTotal amount)は同等で、周期が短い(回数が多い)ほど分布が締まっていることがわかります。リバランスの主目的であるリスクの維持が果たされたことが確認できたと言えます。
◆資産総額の比
リファレンスに対する比の観点から見ると短いスパンであるほど中央値はやや大きくなるようです。ただし分布の両端の収束の仕方は短周期はあまり芳しくありません。
【考察】
上記プロットから主要な数値をまとめます。
◆資産総額の平均値と中央値とシグマ(カッコ内はrefとの比の平均値と中央値)
|
なし |
1年 |
5年 |
10年 |
平均値 |
2.31 |
2.20(1.00) |
2.23(1.01) |
2.25(1.00) |
中央値 |
2.03 |
2.07(1.03) |
2.05(1.01) |
2.04(0.99) |
シグマ |
1.22 |
0.83 |
0.92 |
1.01 |
◆所定値に対する確率分布
|
1年 |
5年 |
10年 |
1<リバランスあり/リバランスなし |
57.8% |
54.4% |
47.7% |
0.5<リバランスあり/リバランスなし≦1 |
41.6% |
45.3% |
52.3% |
リバランスあり/リバランスなし≦0.5 |
0.6% |
0.3% |
0.0% |
【考察】
4資産とも期待値をプラスとしているので、放置しておくと勢いのある資産が全体を引っ張ることでトータルのリターンも高くなり、リスクの観点から見ると頻繁にリバランスする方がバラツキ(未来の不確定性)は抑えられる、という解釈ができると思います。この点はeMAXISの時系列で検証しているバラ売りバランスウォッチとコンシステントな結果です。
特に分布の幅が狭くなっていることがリバランスでリスクを維持することの意味を表していると考えられ、リスク維持においてリバランスは効果があることが確率的に確認できます。ただそれで収益率が向上するかといったらあまり有意差は見出せていません。
結果の有意差に関してはコストと課税を考慮していない割には変化が小さいという印象です。指数変動に用いる乱数ジェネレータの特性等にも依存するのですかね。Rubyスクリプトの乱数がどういうアルゴルかは知りませんが、指数の自己相関性、つまりミーンリバージョン(mean reversion)の性質を考察する必要があるのではないかと感じています。リバランスのタイムスケールが平滑化に相当すると考えるなら、平滑化に平均回帰を顕現させる作用があるのかも含めて別途検討課題としたいと思います。
定量化予定だったリバランスボーナスについては試行ごとにカウンタを用意しなかったので、「トリガー回数が多いほど分布のシグマが小さくなる(→リバランスボーナスが平均的に大きくなる)」という点をもって検討に代えさせていただきたいと思います。
(関連記事)