「敗者のゲーム(新版)」は充分と思える資産運用のエッセンスがまとめられていると思います。
この中に最近の自分に自問自答したい文章があります。
『私たちは、現実を冷静に見つめるのではなく、自分の当初の判断を補強する材料ばかり求めたがる。』
→例えばインデックスや非時価の合理性を考察するために都合のいいデータを使っていないか?
『半ば思いつきで選んだ時点のデータを、将来的な判断のためのベンチマークとして使ってしまうこと。』
→データがないからといって適当な選び方をしていないか?またその結論は統計的に精度が足りているか?
『自分の判断力を過信すること(面白いことに、人間は自分の能力を過小評価することはあまりない)。』
→私が最近特に均等配分押しなのは、数学的にその合理性が理解できたことに加えて、「どれかに重みづける」という自分の判断に自信が持てなくなってきたこともあります。しかし統計が支えてくれるからといって、均等配分を押す自分の判断を逆に過信しすぎていないか、という矛盾を抱えているような気がします。ある一つの概念に囚われず、自分の立場や金融業界の現状を認識し、広い視野で最適な落としどころを考えていくべきではないか?
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データに依存しない極小値回路である均等配分は、客観的に揺るぎない合理性を備えていると考えます。数学や統計を否定することは、例えば情報機器や乗り物、インフラなどあらゆる文明の恩恵を否定することにつながる。しかしながら、シグマや相関を近似する分散数Nというスケールによってインデックスの均等配分とアセットアロケーションの均等配分は捉え方を変える必要があります(インデックス程度のNならば大数近似を仮定できるが、アセットアロケーション程度のNでは統計が足りない、など)。
私のアセットアロケーションも完全均等配分は実践できていません。「N」の他にコストとの兼ね合いや、インデックスの枠組みの縛りから、単一国の資産(例えば日本株)と複数国の資産(例えばグロ株)を同等に扱っていいのかといった疑問が残るためです。現状では費用対効果と全体最適の考え方で、今使えるツールを使いこなして地道に改善を続けていくのがベターだと考えています。
基本的に投資は「感情」と「幻想」との戦いと考えています。どんな変動や混乱があっても、いかに冷静で客観的な判断ができるか、そして外乱の影響を受けにくくするかが勝負だと。市場の幻想の中で自分の感情を徹頭徹尾ドライにコントロールし、資産運用にロバスト性を付加するための手段が「インデックス」やイコールウェイトに代表される「非時価加重ウェイト」であると考えています。
例えば「どのファンドがいいか悪いか」とか「他人のポートフォリオがどうか」とか、即物的な答えや結果だけを求めるのではなく、その結論に至る過程やベースとなる考え方を身につけることによって状況に応じて自ら判断して前へ進むことができると思うのです。
高校時代の国語教師が言っていました。「答えを覚えておかなくても、考え方さえ理解していればあとは類推で何とかなる」。このブログも具体的に何がどうこうより数式やグラフを使って抽象的に考え方を記すことを心がけています。
「出口のない自問自答」。それがインデックス投資、長期投資なのではないか。もしものときに慌てないために、常日頃から背景に存在する考え方を意識することが大切ではないでしょうか。
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