先日の記事で以下のようなコメントをいただきました。私にとっては自分と同じことを考えていらっしゃる方がみえて本当にうれしく感じました。
『「統計的インデックス」という言葉は良いですね!インデックスファンドの信託報酬も現状の限界値レベルまで下がってきたと思いますし、今後は市場の意味不明なσにできるだけ影響されないインデックスが発展して行って欲しいですね。』
ご指摘の通り、信託報酬の低減が投資家側と金融機関側の共存の観点から限界レベルに近づきつつある今、インデックス投資はどうしていくつもりなのか、どうしていきたいのか。
インデックス投資が進化するためには、目の前の状況だけに囚われるのではなく、先の視点に立って判断することが必要と考えます。これは市場のように不確定な未来を無責任に予想することではなく、起こりうる未来に対して課題を抽出し論理的に対策を準備することです。現状把握、真因解析、恒久対策、その繰り返しが進化ではないかと思います。
インデックス投資が発展するためのストーリーについて考えをまとめたいと思います。
【①「統計的インデックス」の導入】
インデックスの主要構成である時価総額加重平均は「σ」を管理する視点が欠落しています。むしろ「β」という非論理的な理屈によりシグマを増大させるという思考に基づいています。
それを統計インデックスに置き換えることで、「平均」の確度を上げ、リスク低減からコスト低減と同等の効果を引き出すことが狙いです。
実際はシステマティックエラーによる律速等により、どこまで改善できるかは確率的な議論になりますが、何も考えないまま市場のクソみたいな変動に振り回されるよりマシだと考えています。
統計を挙げる理由は以下の通りです。コストで努力するプレーヤーは金融機関です。では投資家側は何もしなくていいのか?という疑問を私は感じてきました。インデックス投資の発展をコスト低減(金融機関)に丸投げするのではなく、自分で課題を見つけ解決のために動く姿勢が必要だと考えます。
そのアイデアの一つが統計ロジックであり、コストと同じように金融機関に要望・提案したり、私の場合ならブログに記すなど、できることはあると思っています。
なおここで強調しておきたいのは「スマートベータ」「ストラテジックベータ」と「統計インデックス」は異なるということです。それを分かつのは定性的か定量的かの違いです(あと謙虚さ。統計インデックスは自分で自分を"スマート"とは言わないし、統計は金融以外で当たり前のように用いられており何も特別ではない)。
そして統計インデックスが低コスト化の障害(口実)とならないことを願います。
【②「トラッキングエラー」の最小化】
トラッキングエラーに安定感があるかどうかはインデックスファンドにとって重要な指標と考えています。コストが限界レベルになってくると、その影響は相対的に顕著に現れてきます。
もともと頻繁な乗り換えは控えたいという個人的な考えはありますが、ファンド運用は我々がコントロールできるものではないため、低コストと連動品質が「両立」されたインデックスファンドで資産形成したいという思いがあります。インデックスに関しては一部を除いてもともとIMI(Investable Market Index)でもないですので、カイリの極小化を望んでいます。
今後、統計インデックスが一般化されてくると、ポートフォリオ維持のための取引が少なからず発生し、インデックスとのトラッキングエラーが大きくなる懸念があると考えています。せっかく統計ロジックでシグマを管理し、相乗平均の消失を抑制したとしても、カイリや売買コスト(実質コスト)で消耗していては本末転倒です。これについては運用会社さんにがんばっていただくとともに、我々も信託財産留保額等でカバーしていく必要があると思います。
【まとめ】
インデックス投資とその関係者は信託報酬競争後の世界を考えているのか?コストが下がれば終わりではないと思います。
長期の立場に立つインデックス投資家は「戦後」までも視野に入れて行動したい。一歩引いたところから全体を見渡し、状況に応じて冷静で適切な対処を行う。信託報酬競争の先にインデックス投資が進化を続けるために、必要な要素検討、提案を行う踏ん張りどころであると判断しています。
以下は前記コメントに対する私の回答です。
『同じ考えの方がいらっしゃることがわかり、なんというか救われた思いがします。インデックス投資はコスト(金融機関側)だけに頼るのではなく、異なる視点を持ち、自ら課題をクリアしていくという考え方が必要だと思っています。それが統計的インデックスですね。今までのペースを継続することは難しいですが、微力ながらそんな感じにベクトルを変えていければと考えています。』
パッシブ運用だからって考え方まで受け身では何も進化しません。
【このくらい前向きでありたい】
出典 youtube.com/watch?v=R1IRlyGPI5I
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