ドラえもんの道具に「もしもボックス」があると思います。並行世界を作り出せるなんてタイムマシン以上にぶっ飛んでますわ。そんなもしもボックスにお願いする感じでリスクのない世界を考えてみます。
日々の価格変動(標準偏差、シグマ)が無いと仮定した場合の思考実験です。
例えば日経平均株価において、シグマゼロ、リターンが相加平均のまま推移してきたら現在どうなっているかということを確認してみたいと思います。データ元は「
日経平均プロフィル(Nikkei Inc.)」より、配当込みの日経平均トータルリターン(TR)、課税再投資のトータルリターンネット(TRN)、配当なしの無印日経平均株価を考えます。2005/1/Eから2015/12/EまでのMonthly。
【もしも、リスクがなかったら】
【日経平均TRインデックスのヒストグラム】
【統計量テーブル】
(年率換算) |
日経平均TR |
日経平均TRN |
日経平均株価 |
相加平均(r) |
1.088 |
1.085 |
1.070 |
相乗平均(g) |
1.066 |
1.064 |
1.048 |
標準偏差(σ) |
0.200 |
0.199 |
0.199 |
「g-r」 |
-0.022 |
-0.022 |
-0.021 |
「-(σ^2)/2」 |
-0.020 |
-0.020 |
-0.020 |
【考察】
シグマがなければ相乗平均が相加平均になるので、グラフの濃い色の線で描いたインデックスの変動は薄い色の線のようにエクスポネンシャルで滑らかに増大していくことになります。
これだけのリターンがシグマによって失われてきたことがわかります。グラフの先端に着目すると、指数値で約11年で約1.25倍の差、これは年率にして約2%のロスであり絶対値として配当に匹敵します。コンマ数パーセントの運用管理費用より全然大きいです。
またヒストやテーブルでもリスクの影響(シグマによる相乗平均リターンの消失)を確認できます。特に「g-r」と「-(σ^2)/2」がコンシステントなことがわかります。
※余談ですが日経平均株価は配当が少ないこともわかります(課税前で約1.8%)。例えばグロ株(MSCIコクサイ)は課税前で2.5%を超えています。
しかし、それはシグマという不確定性の存在をプラス思考で捉えたものであり、「結果的に有効に働くケースがある」という概念にとどまるものです(ドルコストの調和平均の考え方以外にも「リターンを減価させるんだから平均取得価格は低下して当たり前」という考え方もできる)。
理想はそのような不確実性が存在しないシグマゼロの相加平均エクスポネンシャルカーブを描くことだと考えています。
【余談ヨルダン】
例えば物理としての「摩擦」がなかったらと考えると、人は歩けないしクルマは走れないしで日常生活は成り立たないと思います。私の好きなスキーもエッジが立たないでしょう。
一方で資産運用においては「リスク」はなくてもよいと思います。上で考察したように、リスクは株価の上昇を阻害する、ある意味「摩擦」「抵抗」ですよね。
ドラえもんではもしもボックスを使うとママに粗大ゴミに出されるのがお約束な感じで何かしらトラブル(いつものパターン)になります。しかし市場に対しては
みたいにヘタレないでほしいと思います。上記の通り複利リターンが失われるからです。「リバウンドを制する」ため、あるいは「幻想をぶち壊す」ために一時的に「下がればいいのに」とは思いますが、シグマは相乗平均を蝕むのでやはり無駄な変動は自重してもらいたいのがほんとのところ。
「リスクがあるからその相加平均が達成できたのだ」という指摘もあるかも知れませんが、その因果関係が論理的な必然として数学的に証明されるなら真実なのだと思います。しかしリスクとリターンの関係である「ベータ(β)」は少なくともウォール街のランダムウォーカーで否定され、資産運用が相乗平均の世界である限りシグマの非合理性は統計的に示すことができます。
出典 matome.naver.jp/odai/2134386164727689601
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