今回は、
①投資成果に占めるコストの影響
②コストを除いた場合のインデックスとアクティブの位置関係
という観点でグラフに手を加えてみたいと思います。ファンドの得たリターンは年率リターンにコストを加えたものになると考えられますので、データそのものは当時のままで、年率リターンに信託報酬と経費率を加算した分布を確認します(経費率のデータがあるかでサンプル数が変わっています)。今回は右軸に規格化した累積頻度を追加しています。
【年率リターン(1年)に信託報酬を加算】
【年率リターン(1年)に経費率を加算】
【年率リターン(3年)に信託報酬を加算】
【年率リターン(3年)に経費率を加算】
【年率リターン(5年)に信託報酬を加算】
【年率リターン(5年)に経費率を加算】
【年率リターン(10年)に信託報酬を加算】
【年率リターン(10年)に経費率を加算】
【考察】
信託報酬や経費率を割り戻した場合の中央値(累積頻度0.5)で見ると1年と3年ではインデックスに分があり5年と10年ではアクティブに分があるようです。つまりアクティブファンドはコストを踏まえればそれなりだが、やはり長期的にはコストが重荷になっているということが考えられます。これが資産運用における「ローコスト効果(低コスト効果)」と考えられます。
アクティブは依然として分布の広がりが大きく、アタリハズレの不確定性が大きい。対してインデックスファンドは同じ指数に連動する限りはバラツキが小さい(グラフの立ち上がりが急峻)という点が不確定性の低減という意味で扱いやすいと思います(インデックスの分布の広がりがコスト競争力やトラッキングエラーの品質を表すと考えられる)。
以下は累積分布が50%に達するときの年率リターン(ヒストグラム度数->0.5%ピッチ)の一覧です。
【累積半値(はんち)テーブル】
|
加算前 |
信託報酬加算 |
経費率加算 |
|
インデックス |
アクティブ |
インデックス |
アクティブ |
インデックス |
アクティブ |
1年 |
22.5% |
19.5% |
22.5% |
20.5% |
22.5% |
20.5% |
3年 |
30.5% |
29.5% |
31.0% |
31.0% |
31.0% |
30.5% |
5年 |
16.0% |
15.5% |
16.5% |
17.0% |
16.5% |
17.0% |
10年 |
3.5% |
3.0% |
4.0% |
4.5% |
4.0% |
4.5% |
手数料が小さければアウトプットが改善するというのは自明です。今回検討したようにコストを除いて運用の成分を分離すると、少なくともこの母集団では長期側でインデックス運用より市場平均(アクティブ運用の平均)がオーバーのようです。また少なくともこのnではインデックス運用と市場平均(アクティブ運用の平均)は一致していません(メディアンですが)。
もちろんアクティブファンドは長期になるほど成績の悪いものが淘汰された結果がこのヒストである点を忘れてはいけないですが。なおアクティブ3年の信託報酬加算と経費率加算が逆転しているのは経費率データ有無による母集団の違いとヒストの分解能によるものと考えています。
これらから、コストによる減損とそのバラツキが大きく、アタリハズレの不確定性も依然として大きいアクティブファンドよりも、コストとバラツキの小さいインデックスファンドが平均的に無難であるという結論に変わりはないと思います。
しかし裏を返せばアクティブファンドでも低コストで合理的なアルゴルを採用すればインデックスを統計的に上回る可能性はあると考えられます。そうなればインデックスとアクティブとして型にはめる必要はなくなると考えています。
【まとめ】
インデックスでもアクティブでも、スクリーニングとか数式に則ったアルゴル(最適化)とか、設計ではあたりまえのことなんだから余計なコストや手数料をかけずに普通にやってくれよ、という感じです。
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