以下はMorningstar Japanからの引用です。投信の平均保有年数について、「アクティブファンドよりインデックスファンドの方が短い」ということが示されています。
【資産流出の指標】
出典 morningstar.co.jp/fund/analyst/2016/3q/MFA120160908.html
「純資産/解約額」で平均保有年数を求められるかは疑問ですが、少なくとも「資産規模に対して流出が多い」という指標にはなりうると思われます。おそらく低コストインデックスの設定が相次いでファンドの乗り換えが頻発しているであろうことが要因の一つと考えられます。インデックスファンドの低コスト化の過渡期が見えているのかも知れません。
前回のチェックポイントからの伸び率はインデックスが大きいとはいえ、この結果を見るとインデックス投資も「金融機関による分配絡みのアクティブファンドの回転売買」といった当局が重要視している問題に対してなんも言えねえと感じます(もちろん高コスト投信の回転売買は金融機関主導のビジネス目的、インデックスファンドは個人の意志ということで問題の本質は違うと思いますが、自分のために動いている、という共通点はあると思います)。
これが「低コストを追求するインデックス投資の合理的行動」なのか、「他者には厳しく自分には甘い言行不一致(ダブルスタンダード)な非論理的行動」なのか、判断は分かれるかも知れません。
普段我々は自分たちに都合のいい情報の中にいるので、このデータは客観的でニュートラルなバランス感覚を養うための良い機会のように思います。
そして、そんな問題がさらに加速しそうなシリーズが設定されたようです。
【アイフリー@SBI証券より】
しかし、気になるのはどのアセットも「信託財産留保額」の設定が無いことです。
最近の低コスト品は日本や先進国のみならず新興国やリートなど運用コストが比較的かかりそうなクラスでも信託財産留保額を設定していないものが多いように思われます。運用の技術や努力によって留保額が無くても指数への精度の良い追従が可能なのでしょうか。
【提案】
インデックスファンドの頻繁な乗り換えや流出に対する抑制策、および純資産増に向けた提案として、信託財産留保額の設定はいかがでしょうか(あるいは実現可能であれば個々の保有期間に応じて運用管理費用が低減する仕組み)。
投資信託は他人とプールするもの、自分の売買行動は(たとえ微々たるものであっても)他者も含めたファンド全体のコストに影響するという自覚を持って、自分のことだけではなく全体のことも考えてインデックス投資を行いたいと考えています。そのために信託財産留保額というある種の「迷惑料」あるいは「手間賃」が存在しているはずです(そのファンドを選択したのは自分の責任であることも明確化できる)。
投資に限りませんが、自分の行動に責任を持つという意識を高めるための一助になるのではないかと個人的には思っています。0.1%でも0.05%でも設定されればだいぶ変わるのでは。たとえ信託報酬や実質コストが0.1%低下したところでトラッキングエラーでキャンセルされる可能性もありますし、いちいち乗り換える気も起こらなくなると思うのですが。
そのような背景があるから、信託財産留保額は単純な手数料(運用管理費用や隠れコスト)と同列に議論できるものではないと認識しています。
【まとめ】
インデックス投資は「実質コスト」にはこだわっても、自分の投資行動が(たとえ微々たるものであっても)その実質コストにどう影響するのかを考えないのでは無責任ですよね。残された人に費用を負担させて自分は去るからどうでもいい、では配慮が足りない。自分の不始末は自分で片付ける、それがインデックス投資の「プライド」であり、それを実現するのが信託財産留保額ではないでしょうか。
信託財産留保額により、指数への連動品質も向上すると思いますし、インデックスファンドの安易で頻繁な乗り換えもある程度は抑制されるのではないかと考えています。
インデックス投資は、ほどよい責任感と、謙虚さと、本質を客観的に捉える洞察を備えるものであってほしいと願っています。
(関連記事)