運用報告書で述べた、気になっていることのふたつめです。
STAM新興株の月次レポートや運用報告書を見るとわかるのですが、新興国に投資しているのに組入通貨が米ドル40%(!)を超えています。組入銘柄もブラジルのペトロブラスやヴァーレ、ロシアのガスプロム、インドのタタなどが米国市場に分類されています。
これはADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)という株式を米国市場で売買しているからです。ブラジルやロシア、インドの株式市場で直接売買するよりもコストや手間が抑えられるメリットがあるため、低コストインデックスファンドに不可欠なモノです。
また中国銘柄も上海ではなく米ドルとペッグしている香港で売買されています。中国に関しては海外投資家が売買できない(A株)ことや、売買できても米ドル建て(B株)という理由があります。
コストのためには仕方ないことであり、STAMやeMAXISのマネジャーさんも頑張ってくださっていると思うのですが、筆者が気にしているのは、為替レートが例えばレアル建てではなく米ドル建てになることです。ただでさえ多い米ドルの割合を減らそうとしているのに、逆に米ドル依存が強まって新興国に投資している意味が半減してしまうという矛盾に陥ります。
ゆえにいろいろ調べたのですが、最終的に米ドルは関係なく、新興国の為替レートが反映されるようです。米ドル円で米ドル安(=円高=ADRの円での評価額が減少)になっても、米ドルレアルも米ドル安(=レアル高=ブラジル企業のADR価格が上昇)になって打ち消される。つまりレアル円だけに依存して、我々はブラジルの成長を享受できるとのことです。
もうひとつADRで気になる点が、
国内ETFと似たような話ですが、現地価格とADR価格との乖離です。特に現在ブラジルは金融取引税が設けられていて、海外投資家は必然的にADRに向かいます。その結果ADRがサンパウロより割高になっている可能性があります。そして将来金融取引税が撤廃された時に、STAMやeMAXISのパフォーマンスが落ちるような気がしています。
プラスでもマイナスでも、乖離すると当初立てたリターンとリスクの計画が狂ってしまうので、極力乖離してほしくないと思っています。