ここで言う時間リスクとは「時間とともに増大する資産価値の確率的なバラツキ」と定義します。
単位時間あたりの騰落率の確率分布が正規分布になるとすると、その分布をn回掛けたn年後の資産価値の確率分布がどうなるのか考えます。
今回はまず現状の時間リスク、つまり「時間とリスクの関係」がどうなっているか確認します。騰落率が"相乗"平均μ=5%、標準偏差σ=15%の正規分布に従うとすると、
【騰落率の確率密度と累積分布(正規分布)@シグマ】
【騰落率の確率密度と累積分布(正規分布)@騰落率】
横軸に何シグマという確率と騰落率を取ったものです。相乗平均が5%になるように相加平均を決めています。このとき初期条件f(0)の資産におけるn年後のa×σのラインは(aは何シグマかを表す係数)、
f(n)/f(0)=(1+μ+a×σ/√n)^n ・・・①
で表されると考えています。ここでn=30までの-5σから+5σまでのラインをプロットすると以下のようになります。
【時間リスク】
時間またはσが大きいほど資産価値のバラツキは大きくなっていきます。この波動砲をある時間でスライスしたときの断面形状がどういう確率分布になっているかを確認するのがこのシリーズの目的です。
ということで上図の10年、20年、30年における断面を切り取ります。縦軸に便宜的に上記騰落率の確率密度と累積分布を取ります。横軸をシグマで表したものと資産価値で表したものの2種類です。
【時間リスクの確率密度と累積分布(正規分布)@シグマ】
【時間リスクの確率密度と累積分布(正規分布)@資産価値】
前者は何シグマというのが時間に依存しないのでn=10、20、30で同じです(上の騰落率の分布と同じ)。後者は横軸をlog表示しています。つまり資産価値の対数もまた正規分布になっているように見えます。このことは①式で両辺の対数を取ると、
ln[f(n)/f(0)]=n×ln[(1+μ+a×σ/√n)]
≒n×(μ+a×σ/√n) (ln(1+x)をテイラー展開)
=μn+a×σ√n ・・・②
「a×σ√n」が正規分布のバラツキに相当するとみなせます。つまり「ln[f(n)/f(0)]」は平均「μn」、標準偏差「σ√n」の正規分布に従うと考えることができます。また、②式により①式は
f(n)/f(0)=exp[(μn+a×σ√n)] ・・・③
と書き換えることもできます(分割数が無限大のときの極限。Max複利)。
ところで上の時間リスクの分布は確率密度に騰落率の正規分布を用いているため正確ではありません(面積が1にならない)。したがって次回は資産価値の対数が正規分布に従うときの確率密度について考えます。
(※このシリーズは週1くらいのペースで更新していく予定です。)
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