実際の資産では、例えば日本債と他は相関ゼロ、株式と株式は相関0.7くらいと、バラツキはありますがある程度一定値に収束する傾向があるので、そのようなパラメータを用いればウェイトはそれに応じて偏りをもって収束するはずです。
前回「
等金額が最強のポートフォリオである」と同様のsimをパラメータを変えて行います。n=3資産とし、合成リスク最小ウェイト、3資産の等配分、3資産を1/6、2/6、3/6で傾斜配分した場合を考えます。
ret1 =(5から15%までの一様乱数)
ret2 =(0から10%までの一様乱数)
ret3 =(-5から5%までの一様乱数)
sig11 =(15から25%までの一様乱数)
sig22 =(5から15%までの一様乱数)
sig33 =(0から10%までの一様乱数)
cor12 =(0.5から1までの一様乱数)
cor13 =(-0.25から0.25までの一様乱数)
cor23 =(0から0.5までの一様乱数)
試行は4096回行いましたがウェイト解が存在する場合のみ抽出したため実際は642回となっています。以下、添字の「min」が合成リスク最小ウェイト、「eq」が等配分、「jika」が傾斜配分に相当します。
【①合成リスク最小時のウェイト(試行順)】
【②合成リスク(試行順)】
【③合成リターン(試行順)】
さらにこれらのヒストグラムを取ります。
【④合成リスク最小時のウェイト(ヒストグラム)】
【⑤合成リスク(ヒストグラム)】
【⑥合成リターン(ヒストグラム)】
【⑦SR(ヒストグラム)】
これらの図で何を言いたいかというと、まずそれぞれの平均値をまとめます。
【平均値テーブル】
|
W1 |
W2 |
W3 |
σ |
R |
SR |
min |
6.2% |
15.0% |
78.7% |
5.7% |
1.4% |
0.24 |
eq |
33.3% |
33.3% |
33.3% |
9.6% |
5.0% |
0.54 |
jika |
16.7% |
33.3% |
50.0% |
7.3% |
3.4% |
0.48 |
①の最小シグマウェイトは共分散に応じて偏りが発生しました。②のシグマは傾斜配分が最小シグマウェイトに近いため等配分より小さくなっています。③のリターンは傾斜配分がシグマを小さくする方向にシフトしているため等配分より小さくなっています。
ヒストについては、④はW3にピークが見られます。⑤と⑥はRGBの分光スペクトルみたいですね。⑥を見るとわかるように最小シグマはリターンがマイナスにも関わらず突撃するのが考えものです。⑦のSR(リターン/シグマ)は等配分が最も鋭いピークをもっています。
【考察】
アセットアロケ程度のnで日本債と新興株など明らかにパラメータの異なるものが混ざるなら、例えば上記のシグマのように等配分以外の傾斜ポートフォリオでより良い解を持つものはあると思います。しかしSRにおいては依然として等配分のバラツキが小さく平均値も高くなっています。等配分のこの特性が外乱に対する「ロバスト性」と考えています。
特にインデックスのように数百から数千のnになってくると個々のパラメータはnによって平均化され(1/√n)、等配分が近似的に最適解になると考えています。このようにシグマや相関のバラツキを考慮した上でウェイトを等配分から傾斜させるのはアリだとしても、少なくとも時価によって重みづけするのは統計的な根拠が無いと思います。
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