リスク分布と確率振幅との関係を考えます。また数式で求めていた元本割れ確率や2倍になる確率をモンテカルロシミュレーションで確認します。
30年後の資産価値のバラツキを考えます。方法は次の通りです。
①相加平均リターン5%、シグマ15%のガウス分布に従う乱数を30個生成
②①の乱数の複利計算で30年後の資産価値を算出
③②を16384回繰り返し(独立事象なのでそれぞれの相関はゼロ)
④16384回分の資産価値データをヒストグラム解析
【試行回数順の資産価値の推移(16384回を16分割)】
【頻度と累積確率(対数)】
頻度は資産価値を1dB(デシベル)ごとに分割して求めています。つまり対数なので横軸リニアのままで正規分布の形になります(最頻値が求められませんが)。また頻度は最大値を1として規格化してあります。累積確率は頻度を資産価値の低い方から積分し16384で規格化しています。
以下が30年後のモンテカルロsimの結果です。
|
sim |
理論値 |
資産価値1の累積確率 |
7.8%(-1.4σ) |
7.9%(-1.4σ) |
資産価値2の累積確率 |
28.4%(-0.6σ) |
28.4%(-0.6σ) |
資産価値の中央値 |
3.2(累積50.0%) |
3.2(累積50.0%) |
資産価値の平均値 |
4.3(累積64.9%) |
4.5(累積65.9%) |
【考察】
以前の考察の通り複利後の資産価値は対数正規分布になりました。元本割れ確率、2倍確率とも理論値とほぼ一致しました。
また中央値と平均値との関係もほぼ理論通りになりました。この結果の解釈として次のように考えられます。例えば16384回の試行をそれぞれ銘柄と考えた場合、そのうち適当に1つ選んだだけでは50%の確率で平均値である4.3倍以下の3.2倍にしかならず、1-65%=35%の確率でしか平均値以上の銘柄を選べない。一方で16384銘柄を均等配分すると35%の銘柄しか持ち得ない平均値を「必ず」確保できる(確率分布に関係なく均等配分自体が平均を取るという作業だから)。
35%を100%にする方法です。かなり重要な結論だと思います。もちろんシグマリターン相関がすべて同じ場合です。銘柄一択や時価加重など無数の加重平均ポートフォリオでもそれらの平均は上記の平均値に収束する(中心極限定理)とは思いますが当たり外れのバラツキがあります。
ちなみに資産価値0.05ピッチでリニアに分割した場合のヒストグラムは以下のようになります。
【頻度と累積確率(リニア)】
左右非対称の分布であることがわかります。
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