リスク分布をローレンツ関数のみで仮定した番外編です。ローレンツィアンのようにガウシアンに対して形状が大きく異なる関数で中心極限定理を確認します(分散が無限大のローレンツ分布には中心極限定理は適用できませんが定義域を制限することで対応します)。
30年後の資産価値のバラツキを考えます。方法は次の通りです。
①中心=5%、幅(γ)=15%のローレンツ分布に従う乱数を30個生成(棄却法による乱数生成のためコード上でレンジを±5γ(5±75%)に制限しています)
②①の乱数の複利計算で30年後の資産価値を算出
③②を16384回繰り返し(独立事象なのでそれぞれの相関はゼロ)
④16384回分の資産価値データをヒストグラム解析
【ローレンツ分布に従う乱数】
【頻度と累積確率(対数)】
頻度は資産価値を1dB(デシベル)ごとに分割して求めています。また頻度は最大値を1として規格化してあります。累積確率は頻度を資産価値の低い方から積分し16384で規格化しています。
以下が30年後のモンテカルロsimの結果です。理論値は正規分布で相加平均リターン5%、シグマ25.0%を仮定しています。
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sim |
理論値 |
資産価値1の累積確率 |
33.8%(-0.4σ) |
34.1%(-0.4σ) |
資産価値2の累積確率 |
52.4%(0.1σ) |
53.8%(0.1σ) |
資産価値の中央値 |
1.8(累積50.0%) |
1.8(累積50.0%) |
資産価値の平均値 |
4.3(累積73.6%) |
4.5(累積75.3%) |
【考察】
ローレンツ分布でも複利後の分布が対数正規のようになりました。シグマ15%ではなくシグマ25.0%で各統計量が一致します。この25.0%という値は合わせ込んだわけではなくローレンツ分布乱数の標準偏差をそのまま用いています。
さらに「ガウス(G)」、「ガウス+ローレンツ(G+L)」、「ローレンツ(L)」分布において、モンテカルロシミュレーションによる累積分布と、リスク分布乱数の標準偏差をシグマとした対数正規分布の理論的な累積分布とを比較します。
【複利後の確率振幅】
ローレンツ分布のように極端にバラツキが変化しても、標準偏差を適切に指定すればリスク分布にガウス分布を仮定した対数正規の理論値で記述できることがわかりました。この結論の根拠は統計学の中心極限定理と考えられます。これにより現実の市場でどのような変動があったとしても確率で議論することに差し支えはないと考えます。
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