住信SBIネット銀行に「元本通貨変動型円仕組預金「コイントス」」というものがあります。先日の「デジタルクーポン」と似たようなものなので併せてシミュレートしておきたいと思います。
【実装】
(基本条件)
特約通貨:米ドル(「実勢為替レート」を100円と120円とする)
適用金利:年8.00%(税引後年6.37%)
預入期間:1ヵ月(為替変動を20日間とする)
特約レート:-0.5円
(確率分布乱数)
関数型:ガウシアン(ローレンツ関数は使用せず)
相加平均(日率):0%
シグマ(日率):0.7%(月率約3%/年率約11%)
試行回数:4096回
(償還条件分岐)
①基準レートが特約レートより円安:元本および利息は円貨で受取り
②基準レートが特約レートより円高
②ー1:元本は特約通貨で、利息は円貨で受取り、その合計が元本以上
②ー2:元本は特約通貨で、利息は円貨で受取り、その合計が元本未満
※特約通貨での受取りも基準レートで円換算(手数料、スプレッドはゼロとする)
基本的にYesかNoなのでスクリプトとしてはデジタルクーポンよりシンプルです。
【結果】
◆まとめ一覧(元本=1、税引き前)
|
100円/米ドル |
120円/米ドル |
平均値 |
0.9962 |
0.9959 |
中央値 |
1.0067 |
1.0067 |
最頻値 |
1.0067 |
1.0067 |
最大値 |
1.0067 |
1.0067 |
最小値 |
0.8933 |
0.9121 |
元本割れ確率 |
36.77% |
37.28% |
期待値はマイナスです。後述するように2択で"勝率"が5割以上なので中央値=最頻値=最大値になっています。また、しきい値の「-0.5円」の比率が相対的に大きくなる1ドル=100円の方が勝率が高くなるため、期待値や元本割れ確率は微妙に良くなっています。
◆試行順(1ドル=100円の最初の128回分)
落とし穴だらけです。
◆償還条件分岐の割合(丸数字は上と対応)
しきい値に引っかからないいわゆる"勝率"は55%前後。その残りが引っかかる確率で約45%。そのうち約8%が結果オーライ(為替の損失が利息未満のケース)、約37%が利息入れても元本割れ。
◆分布(1ドル=100円)
上は突き当たっているのに下はだらだら裾を引いている。
◆分布(1ドル=120円)
1ドル=100円とほとんど変わりません。
【考察】
「特約レート」に対して円高になれば特約レートで換算した外貨で受け取る。実際のレートはこれより円高なので円建ての評価額は低くなる(実際のレートより少ない外貨で償還される)。この分がおそらく利息を軽く吹っ飛ばすほどの損失になっていると思います。為替が上に振れても何もないのに加え、恐ろしいのはデジタルクーポンと同様に為替に下限がないことです(円預金なのに最初から外貨を持っているのとほぼ同じことになる)。
これも為替の変動率と絶対値に応じて利率としきい値が決められていると思います。「特約レート」はスタート時より少し下(-0.5/100=-0.5%)なのでタッチダウンは確率的には50%以下だと思いますが、いざそれを割った時のマイナスが大きいので、「Σ(損益×確率)」で表される期待値は厳しくなるということだと思います。月率σが3%の為替は1ヵ月で概略3%の損失になりうるが、利息は利率の1/12(この場合は8%/12=0.67%)です。おそらく年率で表される利率の大きさに錯覚されるのではないか。
サッカーの攻守決定のようなランダム性の求められる場面で使われる「コイントス」という言葉の意味からも、どのような金融商品であるか想像に難くありません。1/0の「デジタルクーポン」も同じ。原資産が上昇することに賭けるのなら原資産を購入すればいい、ただそれだけ。
あと住信SBIには「預入期間延長型円仕組預金「プレーオフ」」というものもあるようです。
仕組預金の金利が市場金利より高い場合は預け入れを延長しない
→つまり常に市場金利以下の金利。しかも任意に解約できない
→だったら「×0.66」になるが2年目以降は解約もできる個人向け国債でよくない?
というロジック。
不自然に高い利率には取らなくていい「リスク」が潜んでいると思います。それはあちらさんの都合のいいように「設計」されているはずです。
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