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インデックス・ドライバー

デジタルクーポンシミュレータ(β版)

以前からSBI証券にある「早期償還条項付ノックイン型日経平均リンク債(デジタルクーポン)」について考えます。債券にインデックスを組み合わせて利率や償還条件がリアルタイムで変わる金融商品です。しきい値を超えるか超えないかを1/0のデジタルに例えて名づけられたようです。

その条件や説明を見ると「なんかもう金融機関のために作られた商品だな」と感じます。確実にウラがあるはずだということで「期待値」と「メディアン」を見積もりたいと思っていました。まじめに考えるまでもなく投資対象としてありえないことは感覚的にわかりますが、アルゴリズム的な考察の材料としてはおもしろいと思います。こういう問題の定量的な解析にはやはりモンテカルロシミュレーションが適格だと思います。

ということでコードを組んで確認してみます。まずいろいろ条件を書き出します。

【実装】
(基本条件)
利率(年率、税引き前):5%(初回)、5%(株価85%以上)、0.1%(株価85%未満)
期間:4年(1ヶ月=20日とする)
利払日:年4回(4x4=16回の判定機会)
早期償還判定水準:105%(各利払日)
ノックイン判定水準:70%(観察期間中)
早期償還:額面金額100%+早期償還までの利金
満期償還(ノックイン事由発生なし):額面金額100%+満期償還までの利金
満期償還(ノックイン事由発生あり):額面金額100%+満期償還までの利金(最終株価が当初以上)、額面金額x(最終/当初)+満期償還までの利金(最終株価が当初未満)

(確率分布乱数)
関数型:ガウシアン(ローレンツ関数は使用せず)
相加平均(日率):0.02%(年率約5%)
シグマ(日率):1.0%(年率約15%)と1.5%(年率約23%)
試行回数:4096回

(償還条件分岐)
①初回額面100%で早期償還
②2回目以降額面100%で早期償還
③ノックイン事由が発生せず、満期償還を迎える
④ノックイン事由が発生したが、額面100%で満期償還
⑤ノックイン事由が発生し、額面割れで満期償還

一応これらの条件は実装したつもりです。ただし利率や償還の評価日が5日前になっているところは利払日と同じにしています。

【結果】
◆まとめ一覧(元本=1、税引き前)
σ=1.0% σ=1.5%
平均値 1.0261 0.9841
中央値 1.0250 1.0125
最頻値 1.0125 1.0125
最大値 1.2000 1.2000
最小値 0.4216 0.2372
元本割れ確率 8.01% 14.50%









利率が年5%と謳われていても期待値はそれに届かず条件によってはマイナスになるようです(しかもこの表は年率ではありませんし、試行によって運用期間もバラバラです)。元本割れも10%前後あるようです。

◆試行順(σ=1.0%の最初の128回分)

ちょくちょく落とし穴が見えます。1.2が上限に対して下限が底なしである点が恐ろしいです。

◆償還条件分岐の割合(丸数字は上と対応)

初回で早期償還する割合が30%超(①)、2回目以降まで含めると早期償還が80%超(①+②)。ノックインの割合(⑤)がほぼそのまま元本割れ確率になっている。額面100%で満期を迎えられる可能性は非常に低い(③、④)。

◆早期償還(①+②)の時期(①+②の割合で規格化)

後の方まで粘れる確率は減っていく。

◆分布(σ=1.0%)

条件が条件なので1を境に段差というあまり見たことのない分布をしています。年5%×4年=20%の利払いが得られる確率は約0.6%。

◆分布(σ=1.5%)

σ=1.0%より分布が左に膨らんでいます。年5%×4年=20%の利払いが得られる確率は約0.05%。

【考察】
我々にとって厳しい点は以下だと思います。

・株価が1より大きい時の上限を1.05に制限して早期償還する点
・株価がノックイン(0.7)に引っかかった場合の下限に際限が無い点
・利率や早期償還の判定が3ヶ月ごとに対してノックインだけは1日単位で1度でも引っかかればフラグが立つ点

設定する確率分布によって多少違いは出そうですが、リターンが高くてもすぐに早期償還され(日経平均が上がっているのだから年率5%の債券より日経平均に投資した方が良い)、シグマが大きくてもノックインに引っかかって額面割れで償還される(日経平均を持っているのと変わらない)。株価が上がった時は「子」の取り分を制限して「親」が多く取り(株価が1.05になっているのに利払いは"年率"5%なので)、下がった時は「子」に損失を容赦なく押し付ける感じでしょうか。σ=1.5%のように元本割れ確率が15%程度で平均値がマイナスであることがその悲惨さを物語っています。たぶんこういうのを投資ではなく投機やギャンブルと言うのだと思います。

2通りのシグマの試行からわかるように、株価のような変動の大きい指数では残念な結果になるようです。というか変動に応じて利率やしきい値を決めていると思います。安定的に0.85と1.05の間に収まる指数を選べれば普通の年率5%の債券になりますが、それではあちらさんにとって商品価値が無いですし、我々も要らぬリスクを背負ってまで必要か?ということになります。

あと今回の「日経平均リンク債」は現金による償還ですが、他にもETF(レバレッジ系)や株式に転換するリンク債があるようです。見かけ上高い利率にはこのようなウラがあるようです。

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