前からどうやって計算するのだろうと思っていたグラフの計算の仕方がわかったのでここで取り上げます。
ウォール街のランダムウォーカーP.395、「リスクは投資期間に依存する」の節の図1、「株式投資の投資期間と年平均リターンのちらばり方(1950~2005年)」
これを、エマージングマーケットインデックスとコクサイインデックスで、月単位で計算してみました。(1987/12/末~2011/11/末までの276ヶ月)
【MSCIエマージングマーケットインデックス(円)】
【MSCIコクサイインデックス(円)】
やっていることは、いろいろな投資期間で月間騰落率の移動平均をとって、それぞれの最大値、最小値、平均値をプロット。
意味は、例えばエマージングの12ヶ月を例に取って説明します。276ヶ月のうち適当に(連続する)12ヶ月を選んでみると、月6%(×12=72%)のリターンが得られた「輝く12ヶ月」に当たる場合もあるし、月-7%(×12=-84%)のリターンが失われた「暗黒の12ヶ月」に当たる場合もある。「平均的」には月1%(×12=12%)のリターンが得られた、ということを表しています。
ご覧のように投資期間が長くなるほど最大最小のブレは小さくなり、全期間(276ヶ月)の平均に収束していきます。リーマンの影響もあってか、最小値がプラスに浮上するには10~15年の投資期間が必要であることがわかります。
これをもって、節のタイトルは「リスクは投資期間に依存する」となっています。しかしながらこの言葉はミスリードで、これが言わんとしていることは、
「1ヶ月でも1年でも10年でも期間に関係なくそれらを1回の投資とするならば、その1回の投資におけるリターンのバラツキ(これをリスクと言っている)は期間が長いほど小さくなる」
ということだと思われます。
要は移動平均というローパスフィルタをかけて解像度を落としているだけです。
決して、
「投資対象そのもののリスク(毎月のリターンのバラツキ)が低下するわけではない」
ということに注意が必要です。(経済的な安定等の社会構造の変化で実際にリスクは低下していくのかもしれないが、ここでの趣旨とは異なる。)
さらに次の節の「ドル・コスト平均法はリスクを効果的に軽減する」も同様で、時間分散というローパス処理を施しているだけであって、リスクそのものを低下させるわけではないと考えられます。
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