「何に対してどういう意味で合理的か」というと、よく比較されるアクティブファンドに対する資産価値の平均値・中央値の大きさと、それを実現する可能性の高さに関してです。
インデックスファンドがアクティブファンドに長期的、平均的に確率で優ることはよく言われる話です。しかし結果だけで、「なぜ?」という原因に踏み込んで理由が定量的に示されたものはほとんど無いと認識しています。個人的には「どちらが良いか」という議論には興味が無いですが、統計的な背景を考えるとしたらこういう解釈ができる、という考察の記録は残しておきたいと思います。
いつもの対数正規分布の累積確率の図を使います(資産運用のほとんどがこの分布で説明できると考えています)。
【アクティブファンドが確率的にアンダーになる理由】
無数のファンドを集合として捉え確率分布で記述しています。位置は特定できなくても個々のファンドが分布のどこかに存在すると考えます。μを原資産の相加平均、σを標準偏差、時間をn=20(年)として分布はそれぞれ以下を想定しています。
①「μ=5-0.5(=4.5)%、σ=20/√2(=14.1)%」
→インデックスファンド。均等配分などσ低減の効率が比較的高いもの
②「μ=5-0.5(=4.5)%、σ=20/√1.5(=16.3)%」
→インデックスファンド。時価加重などσ低減の効率が比較的低いもの
③「μ=5-1.5(=3.5)%、σ=20/√1.5(=16.3)%」
→アクティブファンド。コストが高く、σ低減の効率が時価加重相当と考えられるもの
ファンドのコストを相加平均から減算し、合成リスクを「1/√k」で表現することで分布に反映します。ここで①と②を見ると平均値は同等ですがシグマによるリターンの消失により中央値に差が生じています。さらに②と③を見るとシグマによるリターンの消失は同等ですがコストにより平均値そのものが消滅し中央値もシフトしています。
これが長期投資においてインデックスファンドが合理的である理由と考えています。なお分散の仕方による差分まで議論できるように①を記載していますが、インデックスとアクティブの差を議論するなら②と③だけを考察すればよいと思います。例えば中央値(数で半分)における資産価値の大きさは②は約1.9、③は約1.5で有意差が存在します。あるいは2倍(資産価値2)以上になるファンドの割合は②は約47%(1-0.53)、③は約36%(1-0.64)というように、確率という定量性をもって回答できると考えます。
【統計量テーブル(カッコ内は確率)】
|
平均値 |
中央値 |
最頻値 |
2倍 |
元本割れ |
① |
2.46(37.6%) |
2.01(50.0%) |
1.35(26.4%) |
2.00(50.4%) |
1.00(13.4%) |
② |
2.46(35.8%) |
1.88(50.0%) |
1.11(23.3%) |
2.00(46.7%) |
1.00(19.3%) |
③ |
2.01(35.8%) |
1.54(50.0%) |
0.90(23.3%) |
2.00(36.1%) |
1.00(27.6%) |
【まとめ】
インデックスファンド(時価加重)もアクティブファンドも、「分散の性能(シグマや期待リターン)という意味では平均的に大差ない。結果を決めているのはコストによる平均値(相加平均)、中央値(相乗平均)の喪失」だと考えています。ここでは個別のファンドがどうなのかという議論は必要無いものです。
もちろんアクティブファンドのすべてがこれにあてはまるとも思っていません。アクティブファンドでもイコールウェイトや最小分散など数学による裏付けのあるウェイティングを低コストで実施すればインデックスより合理的なものは存在するでしょうし、ひいてはインデックスとアクティブの区別も無くなると考えています。
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