バランス型ファンドはキャッシュフローを利用するなどして一応毎日リバランスしていると考えています(実際は微妙に違うかも知れませんがそう仮定します)。
【①MSCI JAPANの自己相関(12ヶ月平滑化時系列から12ヶ月ローリング自己相関を算出)】
【②MSCI JAPANの自己相関(1ヶ月シフト時系列から12ヶ月ローリング自己相関を算出)】
②の1ヶ月単位の自己相関は①のようなマイナス傾向が無く平均は-0.02です(月単位ですが日単位でも同じことが言えると思います)。これは非平滑化の自己相関関数がパワースペクトル密度のウィナーヒンチンの定理により「ゼロ」と導かれることを裏付けるものと考えられます。
そうすると「最小時間分解能あたりのリバランス(連続リバランス)を実施するバランス型ファンドは負の自己相関の作用を放棄している」という流れになるのではないかと考えています。つまり平滑化により現れる平均回帰(ミーンリバージョン)の恩恵が受けられないということであり、適当な期間をおいたマニュアルリバランス(離散リバランス)の方が効果が得られる可能性がある。これはバランス型ファンドの非合理性の一例になるのではないかと認識しています。
統計的な視点を中心にバランス型ファンドの性質をまとめてみます。
◆よいところ
・資産配分通りの(加重)平均が取れること(さらに均等配分なら近似的に対数正規分布の平均値が得られる)
・リバランス時の売却課税や信託財産留保額が抑えられること
◆よくないところ
・平均回帰が反映されないこと(自己相関ゼロのリバランス)
・継続的なリバランスコストが必要なこと
◆どちらともいえないところ
・計算通りのリスク、リバランスボーナスが維持されること
※リバランスボーナスはリスク低減効率を表すものであって連続リバランスと離散リバランスの是非を決めるものではないと認識(放置するとウェイトが変動してリスクリターンが単純比較できないので)
「平均が取れる」「所定のリスクが維持される」といった合理性は健在ですので、これでバランス型ファンドが全否定されるわけではないと思いますが、個人的にはリバランスという目的に対する「平均回帰の欠落」は割と大きな問題だと考えています。
リバランスやバランス型ファンドの議論は解析的な定量化が難しいので現象論や感覚的になりがちですが、統計を考えると直感では想定し得ないような興味深い結果が得られておもしろいです。
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