インデックス投資において「インデックスファンドはアクティブファンドに"必ず"優る」という誤解があるのではないかと以前から個人的に感じています。「そんなことはない。でもインデックスが平均的に無難なのは確か」ということを確認したいと思います。
Morningstar Japanのファンド検索から「国内大型ブレンド」、DC(確定拠出年金):含む、SMA(ラップ口座):除く、運用年数:3年以上、を指定し、インデックスファンド(ETF含む)はTOPIX連動と思われるものだけを選別、アクティブファンドは出てきたものすべてでヒストグラムを描いてみます(2015/08/31時点)。
【年率リターン(1年)】
【年率リターン(3年)】
【年率リターン(5年)】
【年率リターン(10年)】
【考察】
分布を見ると、センターはインデックスが高いがアクティブの裾はそれを上回るものもあります。つまり「インデックスファンドはアクティブファンドに必ず優る」ということはなく、より良い成績を残すアクティブファンドも一定数存在します。ただその数は少なくともこの分布ではぱっと見ただけでも相対的にマイノリティであることがわかります。
過去実績で考えても「分布のどこに来るかわからないアクティブファンドよりも、ファンド間のバラツキが小さく、かつセンターの位置がアクティブファンドのそれより高い位置に存在するインデックスファンドを選ぶのが合理的」だと思います。この考え方はインデックスにおける均等配分の議論に通じるものがあります(参考「
イコールウェイトインデックスの合理性」)。少なくとも私には分布の右端に来るアクティブファンドを事前に選ぶことはできません(というか高いコストを払ってまで高いリターンを求めようとしていない)。
なお、このプロットはファンドを特定していませんので、1年、3年、5年、10年と時間が経過してもインデックスのピークより"常に"右側に存在し続けるファンドがあるかまでは確認できません。また成績の良くないアクティブファンドはいつの間にか消えていると思われますので、インデックスに対する分布のアンダー具合はこのプロットよりさらに顕著になると思います。
あと似たような誤解に「インデックスファンドは"常に"プラス」というものがあるような気がしています。こちらもそんなことはなく、例えば対象指数が10%下落したら、平均的にインデックス:-10.5%、アクティブ:-11.5%というようなイメージです。この差が経費率であったり運用の実力や売買コストであると考えられます。「上回る≠常にプラス」です。
【まとめ】
期間を区切ってn増しして処理すればインデックスに敵わないアクティブファンドはゼロではありません。しかし問題はそれを選んだり当てるという不確定性を経由することでシグマをさらに増大させることだと思います。
インデックスファンドの合理の一つは「同じ指数であれば何を選んでも当たり外れが相対的に小さいこと」だと考えています(どのような指数を選ぶかはまた別の問題)。背景に存在する統計学による裏付けやコスト・カイリの寄与を考察しなくても、このような実績を解析するだけでインデックス投資の合理性が確認できると思います。
【余談ヨルダン】
最後に、リターン以外の指標におけるヒストグラムを描いて終わりにしたいと思います。
【標準偏差(3年)】※例えば15%のインデックスと25%のアクティブでは0.15^2/2=1.125%、0.25^2/2=3.125%で2%のスタート位置の差が発生します。
アクティブファンドはファンドごとの標準偏差のバラツキも小さくありません(それぞれが何らかの方法でインデックスを上回ろうとしているから)。コストや勝率を議論する以前にシグマが想定できないと資産運用の設計もできないため、そもそも資産形成に向いていないと考えています。
【信託報酬】※例えば0.5%のインデックスと1.5%のアクティブでは1%のスタート位置の差が発生します。
【経費率(実質コスト)】※アクティブの経費率が信託報酬より低いものがあるのは謎です。FOFの扱い等に絡むのかも知れません。
アクティブファンドは標準偏差によるロスとコストで1〜3%くらいのおもりを背負っていることになります。それを考慮するとリターン分布のセンターもだいたいトントンになりそうです。
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