インデックスは統計を用いてロジカルに構築されるのが本来の姿だと思います。これまでの時価総額比率に代わって統計インデックスが一般的な時代になると「デザインレビュー」(Design Review、DR、設計審査)が必要になってくるのではないかとふと感じました。そう、インデックス投資も設計レビューみたいなことをすればいいのにと思いますね。
【デザインレビューの必要性】
これまでのインデックスファンド/ETFも発表の時にいろいろ資料は作成されていますが、多くは過去の実績(時系列でリターンがTOPIXに対してどうかとか)がメインなので、どうせなら設計思想やアルゴルを数式やグラフを用いてもっとマニアックかつ定量的に記述していただければよいのではないかと思います。むしろそれくらいしないと統計インデックスの意図や本質を伝えることはできないのではないでしょうか。
個人的には数式で記述できないような非論理的なアルゴルはインデックスに採用すべきではないと考えています。それは設計根拠が無いと考えるからです。手数料を取って顧客に販売するような商品で数字に根拠の無い設計など無責任以外の何物でもない。プロとして対価を要求するなら論理的でレベルの高いアウトプットを期待したいです。
デザインレビューを挙げる理由は非時価インデックスで特に懸念している純資産規模です。せっかくのロジックファンドも認知の低さやコストの不透明さによる純資産額の低迷で償還となっては元の木阿弥です。それこそファンドオブイヤーのように人を集めて周知するとか(統計インデックスはこの業界ではマイナーすぎて人が集まらない気もしますが)。
DRは設計値の他に、例えばコストやトラッキングエラーといった課題や懸念を述べるよい場だと思います。組織では一つ一つチェックポイントを判断して確度を上げながら進めていかないと後からでは取り返しがつかなくなるので、仕事の進め方として重要です(商品を設計・開発するために必要なプロセス)。おそらく運用会社の中でもそのような仕組みはあると思います。
最近のでそれに近いのが「上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(1399)」[
pdf資料]です。これをもっと統計ライクにすればよいと思います。
例えばP.2『5 MSCI Global Minimum Volatility Indexと同じ最小分散になるように最適化を行なう手法で、同150銘柄の最適化を行なう(最大ウエイト1%・最少ウエイト0.05%の制約付き)』と記載された部分の具体的な方法や、その最小分散を維持するために必要なコストを我々インデックス投資家は知りたいのです。投資するに値する合理性を備えるかを「判断」するために(もしかしてMSCIの権利とかに引っかかってできないとかありますかね?)。
例えばこんな感じのスライド(私ではなく金融機関にやってほしい)。
【高配当・部分均等型最小分散インデックス】
かなり適当に作った上に私にセンスが無いのでクオリティはご勘弁ください。ソフトもKeynoteではないです。申し訳ありませんm(__)m。フォントだけはヒラギノにしています。
【考察】
個人的には不必要にシグマを増大させる市場を数学的に押さえ込みたいという理由で非時価加重インデックスを望んでいます。この指数のように結果的にパフォーマンス(相乗平均)も改善すると思うので内容を上記のようにしてみました。
数学と統計に基づいてきちんと設計されていれば結果はついてくるので、その設計の部分を端的にシンプルに示してほしいと思います。スライドでは「解を探索」と書きましたが特にこの部分を教えてもらいたいです。制限条件付けて解析的に解けるのか多変量解析やジネティックアルゴリズムみたいなものを使うのか。
また「部分均等化」の部分はクリップすることで上位を均等化し下位を平準化する。これによって下落局面でダメージを小さくする低シグマを維持し、上昇局面でも乗り遅れない瞬発力を確保するようなイメージです。ゆえに「本実施形態」のエラーバーを小さくしています。外的要因に対する当たり外れをポテンシャルの概念で分散させることが均等型のロバスト性の基本的な考え方です。
本来ならこのページの後にトラッキングエラー最小化に向けた取り組みなど課題・懸念に対する対策や見通し、検討日程が述べられると思います。過去の結果どうこうよりそちらの方が大切だと思います。トレースや免責事項ばかりでは面白くありません。本当に合理的な指数なら過去の結果に依存しないはずです。
また純資産規模と流入出量に応じた経費率のマトリクスなども事前に見積もることができるのではないでしょうか。少なくとも設計として数値は押さえてあるはずです。
進化の無い時価加重インデックスでも懸念点があるなら事前に宣言してオーサライズ(承認)をとっておいた方がよいと思います。例えば配当が無いとか銘柄数を削って追従性が悪いとか(投資信託説明書をよく読めば書いてあるのかも知れませんが、重箱の隅を叩かないといけないようなものはよろしくない)。コストだけを見て飛びつく人に対して後から安かろう悪かろうが発覚しても心証が良くないので。
【まとめ】
非時価インデックスは新しいことにチャレンジするのですし、デザインレビューとして筋道立てて論理的に説明すれば納得してくれるインデックス投資家は全国にたくさんみえると思います。本気で純資産を増やそうという気があるのなら、何もしないまま「資金が集まらないから終了」という事態は避けるべきと考えます。
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