タイトルは「光の波動性と粒子性」から名づけました。
日興アセットマネジメントが設定した非時価ETF「上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(1399)」について、以前コメントでご質問をいただきましたので下記のように回答しています。
『「高配当+最小分散」は統計的に非常に合理と考えています(1%制限なので本当の最小分散にはならないと思いますが)。等金額の要素も兼ね備えており、非時価インデックスとして現状のベストに近いのではないかと思います。』
個人的には高配当と最小シグマと均等配分の要素を備えた、現行インデックス投資で最高のロジックではないかと考えています。もちろん金融工学の最前線ではより高度で効率的なアルゴルが当たり前のようにあると思いますが、我々庶民のインデックス投資ではこれくらいでいいんじゃまいかと思えてしまいます。
特に1399のシグマ管理は単なる最小シグマではなく、最小分散モデルをクリップ(組入比率制限)することで均等配分との二重性をもたせていることに合理性を感じます。有効フロンティアの概念等と同様に、実際のところ最小分散はバカ正直に計算すると特定の要素が多くなったり使わない要素が出てきたり気難しい部分がありますので。
個人的にはこれを「部分均等(クリップ)型最小分散」と勝手に呼んでいます。
【部分均等型最小分散の合理】
◆最小シグマアルゴルで不確定性の低減と相乗平均消失の抑制を両立
◆均等配分(クリップ)で相加平均の部分実現とロバスト性(変動適応性)の顕現
(ロバスト性・・・変動に対する冗長性・応答性・瞬発力)
何も考えないまま市場と特定銘柄に変動を支配される時価加重や株価加重よりよほど論理的で設計根拠があります。「手間がかからないこと」と「思考停止で何もしないこと」は意味が異なると考えます。
最小分散やイコールウェイトの合理は「
長期投資において「高配当+等金額」が合理的であることの考察」「
イコールウェイトが「平均」であるということ」で考察したように確率分布として定量化できることです。当時は「等金額」としましたが「最小分散」と同じ意味で使っています(最小シグマの大数近似が均等配分)。現実の変動は大数近似にならないのでまじめに計算すると最小分散のアルゴルに帰着します。それがめんどいから均等配分でいいじゃん、というのが私の思想です。今回のETFで日興AMというかMSCIはそれをクリップで実現してきた。
部分均等型最小分散インデックスの概念を、デザインレビューの時のようにまたスライドで考えてみたいと思います(今回もさらに適当で申し訳ありませんorz)。
【均等配分と最小分散の二重性(+ロバスト性のイメージ)】
一部の銘柄に指数全体の変動が引っ張られるのを防止するために、配分をクリップ(キャップ)するという手法が用いられると思います。そのしきい値を超えるものは他の要素に振り分けられます。上限のすり切りと下限の底上げにより、主に上位の一部分だけを見れば均等配分とみなせ、また全体として均等配分により近い構成が実現していると考えられます。
【解釈と考察:数学的特性とロバスト性の顕現】
ところで「最強のポートフォリオ」であるイコールウェイトには以下の合理が存在すると考えています。
①相加平均が求まる
②ロバスト性を備える
→個別要素の変動が全体の変動に伝わりにくい
→市場変動のパターンにハマるハマらないの確率を緩和
さらに等シグマ等相関等相加平均の仮定を置けば以下が成り立ちます。
③最小分散(最小シグマ)
④最大リバランスボーナス
⑤最大相乗平均
⑥最大SR(S/N向上)
如何にこの特性に近づけ顕現させるかがインデックス開発の命題と考えています。
まず均等配分は無条件で相加平均が求まるという特性を持っていると考えています。また均等配分はロバスト性を備えますが、あくまで近似下でないと最小分散などの数学的な諸特性は得ることができません。その場合は最小分散の式に基づいて構成を決める必要があります。一方で非時価の最小分散といえども集合のシグマや相関によっては特定の要素にウェイトが集中する可能性があります。
それをクリップして一部を均等型に置き換えるのは結果的に合理的な考えだと思います。余剰分を下位の要素に振り分けることで全体最適と平準化を実現できます。このクリップを部分均等型と捉え、平均をとる相加平均の作用とロバスト性の付加、ベースとなる最小分散アルゴルのシグマ低減を鷲掴みするという解釈にしました。
これを「均等配分と最小分散の二重性」と捉えています。
スライドの左下の図が上記①の相加平均であることを示します。複利(対数正規分布)において中央値は相乗平均、平均値は相加平均となります。相加平均は確率で50%以下のマイノリティです。イコールウェイトは相加平均そのものなので確率を無視して平均値を実現できると考えています。
スライドの右上の図が上記②のロバスト性を示します。曲面がポテンシャルエナジー(変動性)をイメージしています。本実施形態は底の方でどこに振れても底に戻ってくるという安定感があります。エントロピーは増大する一方でポテンシャルは最小値(極小値)を取りたがるのが宇宙の真理です。これにより変動に対する感度の低減(減感)を実現し、暴落時のダメージは緩和できるがその後の反発についていけないといった高配当や最小分散の懸念である特定状況のハマリ(環境依存)を軽減することができると考えています。
【まとめ】
均等配分の良いところは統計的諸特性の他に環境依存を軽減できることだと考えています。また確率的にマイノリティな相加平均を実現します。最小分散をクリップすることで均等配分ライクな振舞いが期待されます。
【余談ヨルダン】
このようにインデックスも合理的なものができるのに、なぜパッシブ投資は指数のポートフォリオを無視してアセットアロケーションだけにこだわるのかが謎です。
懸念としては、指数からファンドにするとコストやカイリでどこまで削られるかという点。またETFは市場カイリと配当分配があります。早急に(無分配)インデックスファンドでの設定を望みます。
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