ある相関係数でnを増やしたときのσの減り方を見てみます。
等σ等ウェイト(=1/n)を仮定し、自分との相関を1、他との相関をrとすると、合成リスクは
σf^2=Σ(∂f/∂xi)^2σi^2+ΣΣ(∂f/∂xi)(∂f/∂xj)rijσiσj
=n×(1/n)^2×σ^2+(n^2-n)×(1/n)^2×r×σ^2
=(1/n)×σ^2+(1-1/n)×r×σ^2
よって、
σf=[√(1/n+(1-1/n)r)]σ ・・・①
これをプロットします。σで規格化してあります。
相関が0.9でも頑張ればσは減ります。
しかしその収束は√r。つまり①式でn→∞に飛ばしたときに単体のσの√r倍が極限という制限があります。
r=0.5なら0.7倍まで、r=0ならゼロまでσを下げることができます。
つまりnが大きくなると個別のσ(①の第1項)はあまり関係なくて、r(①の第2項)が重要になるということになります。どうせ相関で律速してしまうなら最初の仮定である等配分でエイヤで決めてしまうのがよろしいとも言えます。
またrがマイナスの場合は取りうるnに制限があります(σが虚数になるから)。
1/n+(1-1/n)r≧0より、
n≦1-1/r (r<0)
nに依存するσの他にシステマティックエラー(換言すればrで律速するσ)があるので、それに対して無視できるまで(2桁落ち程度)下げられれば、それ以上のnは必要ないとも言えます。
rに依存する項としない項との比がa:1になるとすると、
a/n=(1-1/n)r
n=1+a/r (r>0)
例えばa=10^2、r=0.5でn=201です。またグラフを見てもわかるように現実的な相関ではn=20程度で頭打ちになります。大抵のインデックスの銘柄数はすでに充分なので、我々がやることは資産数や対象国のnを増やすのが理屈では効果的です。
例えば日本株もグロ債も、指数とのカイリが大きい新興債も、相関が1でなければσの低減に貢献してくれるでしょう(個々のσが大きいと逆に上がる可能性もあります)。また単純に対象国を増やすだけでなく、時価総額加重から等金額にして配分を均すだけでもσに対する対象国の寄与が効果的に働くようになると考えられます。
前々回の記事で『通貨も資産も多数の国に分散できるグローバル投資では為替換算で増えるリスクを分散(相関係数とn)によってそれ以上に減らせるのではないか』と書きましたが、定量的には①式の通りです。実際は為替換算(積の合成リスク。r=0と仮定)でひと声√2倍、①式の相関とn(r=0.5と仮定)でひと声√0.5倍でやっとトントンなので、やや分が悪いセンスといったところでしょうか。
なお、ここで見ているのは同じσと相関のものをかき集めたらどこまで全体のσを下げられるかということです。実際は業績、規模、社会情勢、投資家心理などによって個々のσと相関はすべて異なりますし、システマティックなσと相関も異なります。それでもコストに注意し、変な銘柄・ファンドを掴むといった裏問題がなければ分散は多いに越したことはないと考えます。
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