投資は基本的に確率でしか議論できないと思っています。なので普段から最高とか絶対とかいうホラは吹かないようにしていますが、カミカゼが吹いている気がするので某書籍に倣って今回は挑戦的なタイトルです。別名「等配分の挑戦状」。
そこでシグマ、リターン、相関係数に乱数を用いてモンテカルロシミュレーションしてみます。n=3資産とし、試行ごとに各資産のシグマに0から30%までの一様乱数、リターンに0から10%までの一様乱数、相関係数に-1から1までの一様乱数を適用して合成リスク最小を与えるウェイトを求めます。
合成リスク最小ウェイト時の合成リスク、合成リターンに加え、3資産の等配分、3資産を1/6、2/6、3/6で傾斜配分した場合の値も求めます。試行は4096回行いましたがウェイト解が存在する場合のみ抽出したため実際は978回となっています。以下、添字の「min」が合成リスク最小ウェイト、「eq」が等配分、「jika」が傾斜配分に相当します。
【①合成リスク最小時のウェイト(試行順)】
【②合成リスク(試行順)】
【③合成リターン(試行順)】
さらにこれらのヒストグラムを取ります。
【④合成リスク最小時のウェイト(ヒストグラム)】
【⑤合成リスク(ヒストグラム)】
【⑥合成リターン(ヒストグラム)】
【⑦SR(ヒストグラム)】
これらの図で何を言いたいかというと、まずそれぞれの平均値をまとめます。
【平均値テーブル】
|
W1 |
W2 |
W3 |
σ |
R |
SR |
min |
33.6% |
33.0% |
33.4% |
4.2% |
5.1% |
6.54 |
eq |
33.3% |
33.3% |
33.3% |
7.7% |
5.1% |
0.82 |
jika |
16.7% |
33.3% |
50.0% |
8.7% |
5.1% |
0.79 |
①よりウェイトが乱数に応じてバラつくこと、そしてウェイトの低い方に向かって密度が高くなっていることがわかります。このウェイトの平均を取るとテーブルの通り等配分を表します。いろいろなパターンを試行すると、「合成リスクを最小化するウェイトはパラメータに応じて変化するが、パラメータがランダムに変化するときのウェイトの平均値は等配分になる」ことを示しています。次に②のシグマを見ると、低い方から最小シグマ、等配分、傾斜配分と点の集合が分離しているように見えます。シグマの平均値は最小シグマが低いのは当然として傾斜配分より等配分の方が低くなることがわかります。一方③のリターンはそれぞれの点の集合に偏りは見えません。リターンの平均値は同等となり各ウェイトに有意差がないことがわかります。
ヒストについては、④は特徴的なピークがあるわけではありませんが平均は①の通り1/3の等配分になります。次に⑤が注目で、等配分は傾斜配分に対してシグマの低い方向にシフトし、形状も左右対称に近くなっています。⑥はどれも大きな差がないことがわかります。⑦のSR(リターン/シグマ)は⑤のシグマと逆のセンスです。
【考察】
確かに毎回シグマや相関の値が分かっていれば、最小リスクウェイトを求めることで上記のようにすばらしい成績を残すことができます。しかし、例えば年単位で考えるとして、年初に「今年のシグマと相関はこうなるから配分はこうしよう」と事前に決めることはできません。シグマは比較的安定しているにしても、日々移り変わる相関を事前に決定できるか、ということになります。できることは平均値からあるシグマを持った幅を確率的に議論することだけです。
未来がどうなるか「わからないから」等配分が「BEST」な選択になると考えます(ただし資産や銘柄によっては明らかに有意差があるものもあります)。等配分にしておけばどんな状況でも「平均的に」最小のシグマが得られることになります。「結果」や「予想」に合わせてウェイトを変える必要はありません。これは等配分の合理性を説明するひとつの根拠だと思います。このように数学的にもシミュレーション的にも等配分の合理性を確認済みです。
相関が強まったとか分散投資は終わったとか、目先のパラメータの変動に踊らされないで等配分でどっぷり構えておくのがよいのではないでしょうか。
また、等配分を選択することで過去から未来の期待リターンを推定する是非の議論からも解放されます。その代わり期待リターンはできなりになります。
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