対数正規分布の考察から、2倍になる確率は時間とシャープレシオ(SR)とシグマに依存することがわかっています。
f(n)/f(0)=exp[(μn+a×σ√n)]=2より
2倍σ:a=-(μ/σ)√n+ln2/(σ√n)=-√n(μ/σ-ln2/(σn))
2倍確率:F(a)=1-[1+erf(a/√2)]/2 ※erf(x):誤差関数
つまりシグマと相乗平均リターンの大きさで決まります(積立は考慮していません)。これをもとに2倍確率と2倍σを求めます。2倍σとは確率を正規分布の何シグマか(上式のa)で表したものです。正規分布であればaと確率は一意に対応します。なお確率の方は累積分布を1から減算して「2倍以上になる確率」として定義しています。
【2倍確率(シグマ=15%)】※Z軸反転
【2倍σ(シグマ=15%)】
以下はZ軸に対して垂直の平面から見たものです。
【2倍確率(flat)(シグマ=15%)】
【2倍σ(flat)(シグマ=15%)】
3Dはイメージが掴みやすい一方で数値の読み取りが困難なので、以下の2つの断面を切り取ります。
【時間依存(シグマ=15%、相乗平均リターン=5%の断面)】
【SR依存(n=30の断面(シグマ=15%))】
代表的な値を抜き出して表としてまとめます。
【2倍確率(一覧)(シグマ=15%)】
【2倍σ(一覧)(シグマ=15%)】
【考察】
私がよく例に用いるSR=1/3(シグマ=15%)で30年投資したときの2倍確率は83.7%(-1.0σ)となります。また非課税口座の5年では9.3%(1.3σ)です。後者は時間的に厳しいとしても、前者は30年かけた割にはもうひとこえのように感じます。裏を返せば16.3%の確率で2倍にならないということで、割と衝撃的な結果だと思います。ちなみに確率50%(0σ)の中央値ではSR=1/3(シグマ=15%)、30年で資産は約4.5倍になっているはずです(exp(0.05×30))。
また元本割れ確率と違って2倍確率はSR=0を軸に対称ではありません。より大きなSRと時間が求められるという結果です。定量的にはSRは「μ/σ=ln2/(σn)」だけシフトします。
またSRが等しいときは「+ln2/(σ√n)」の項よりσが大きいほど2倍確率は高くなります。
なおln2の2を変えれば、例えば半値(はんち)や10倍など任意の倍率で求められます。以下は「長期投資におけるk倍になる確率」です。
k倍σ:a=-(μ/σ)√n+lnk/(σ√n)=-√n(μ/σ-lnk/(σn))
k倍確率:F(a)=1-[1+erf(a/√2)]/2 ※erf(x):誤差関数
このように目標とする倍率と確率に応じて資産設計を行うことが重要ではないでしょうか。
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