かねてからの疑問だった「インデックス投資において時価総額加重平均が最適解とされる理由」が下記資料に記載されていました。
【効率的市場の帰結が時価加重である理由】
=======引用開始=======
時価加重ポートフォリオが最適ポートフォリオである(P.7)
【前提】
(1)投資家はリスク回避的であり、期待効用の最大化を望む
(2)投資家は期待投資収益率とその分散に基づいてポートフォリオを選択する
(3)投資期間は全投資家に共通であり、かつ、1期である
(4)投資家は無リスク利子率で無制限に借入れや貸出しができる
(5)投資家はすべての利用可能な情報を完全に知っており、個々のリスク資産のリスクとリターンについて同質的期待を持つ
(6)税金や取引コストのない完全市場である
ある瞬間の株価は「知り得る情報を持ち、期待効用の最大化を望む合理的な市場参加者が均衡させている“正しい価格“である」と理解される
その“正しい価格”を壊さないように唯一のポートフォリオを全知全能の合理的投資家が構築するのである。ポートフォリオのウェイト構成については、すべてのリスク資産の時価総額ウェイトでそのままコピーしないと、“正しい価格”が壊されてしまうことになる。ゆえに、すべてのリスク資産を時価加重ポートフォリオで保有することが最適であると結論付けられた。
=======引用終わり=======
つまり「ある瞬間の時価が常に正しいと仮定するから、その平衡状態に影響を与えない時価ウェイトが最適解となる」ということでしょうか。
何か数学的に極値が得られる命題かと思っていたら単に「王様」を決めているだけのように思えます。現代ポートフォリオ理論に関してにわかが意見するのは恐縮ですが、前提がすでに仮定というよりそうあってほしいという願望ではないでしょうか。教科書には数学的な証明が記述されているのでしょうか。
ということで「証券分析」のような書物なら何か書いてあるだろうと思って珍しく図書館に行ったのですが、残念ながら置いてありませんでした(代わりに「インデックスファンドの時代」「しぶとい分散投資術」を読みました。別途簡単に感想を残したいと思います)。
「価格が適切か」と「資産運用として合理的で効率がよいか」とは別問題だと思います。重要なのは現在の「価格(絶対値)」の正しさではなく、ある時点からの「変化率(相対値)」ではないでしょうか。何をもって「正しい」と定義しているのか意味がわかりません。価格が適切かの証明は市場が合理的という仮定だけに支えられ、リスクの最小化、SRの最大化といった論理的な帰結はどこにも無いように見受けられます。個人的には株屋的、証券屋的な古い思考そのものだと思います。
その価格は本当に正しいのか?という疑問は出ないのか。
・リーマンでパニクる理由(リーマンを引き起こす理由)
・アベちゃんに踊らされる理由
が説明できない。
投資家とか市場が合理的とか、
「んなわけねーじゃん」
「よくこんな理屈がまかり通るよな」
というのが率直な感想。
「強欲に支配された市場のありもしない合理性に頼るよりも、その非合理性の存在を認めてノイズとして処理すればいい」というのが統計屋の考え方。
また市場が効率的ならバリューインデックスも時価加重と一致するはずですがそうなってはいません。バリューインデックスが存在する時点で効率的市場の反証(矛盾)ではないでしょうか。
結局は「市場が合理的という上記6項目を仮定する(時価加重の前提)」ことと「変化率が大数近似で等シグマ等相関となることを仮定する(イコールウェイトの前提)」ことのどちらがリーズナブルか、現実的かということだと思います。なおイコールウェイトを内包する統計インデックスは等シグマ等相関まで仮定しなくても最小シグマ、最大SR等を数学的に求められます。
うーん、証券屋と統計屋が永遠に平行線をたどりそうな議論ですわ。
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