【中心極限定理の確認】
まず、ローレンツ分布に従う乱数を用いて中心極限定理が成り立つかモンテカルロシミュレーションします。
①中心=5%、幅(γ)=15%のローレンツ分布に従う乱数を30個生成(棄却法による乱数生成のためコード上でレンジを±5γ(5±75%)に制限しています)
②①の乱数の加算平均を算出
③②を16384回繰り返し(独立事象なのでそれぞれの相関はゼロ)
④16384回分の加算平均データをヒストグラム解析
中心=5%、γ=15%(定義域±5γ)のローレンツ分布の標準偏差は約25%になります。中心極限定理ではこれを30個サンプリングした分布が中心=5%、σ=25%/√30=4.6%のガウシアンになるはずです。
【ローレンツ乱数と中心極限定理】
緑のラインはローレンツ分布の理論形状です。これに従う乱数の30回平均を16384回繰り返したヒストグラムが水色になります。マゼンタのラインはガウス分布の理論形状です。上記の予想通りσ=25%相当のローレンツ乱数がσ=4.6%のガウシアンに一致することが確認できました。
元の分布がどんな形状でもサンプリングするとガウシアンになる・・・とても奇妙で不思議な法則であります。
※なお資産価値の場合は積を取るので「対数」正規分布になり、今回は平均なので対数を取らなくても正規分布になるということになります。またローレンツ分布のような分散が発散する関数には適用できないようですが、レンジを制限しているためか成立しているように見えます。
【資産運用との関係の考察】
中心極限定理は統計学・確率論における以下の定理です。
『平均値m、分散σ^2の任意の分布をもつ母集団から大きさnの標本を抽出したとき、標本平均Xの分布は、nが十分大きいと、正規分布N(m,σ^2/n)に近づく』(吉沢康和「新しい誤差論」共立出版)
つまり「株価がどんなバラつき方をしても、n年後の資産価値のバラツキは対数正規分布になる」ということを表しています。ただし複利後の確率振幅の「形状(確率分布の関数形)」が対数正規になるというだけで、平均値や標準偏差は元の株価変動に応じて変わることには注意が必要です。
この定理について、とある確率分布を仮定した場合の資産価値のバラツキが対数正規分布で記述されることを乱数simにより確認しています。
以上により、どんな暴落やバブルのテイルリスクがあっても安心して確率を議論することができると考えます。
なお私としては、これは「バイアンドホールドで暴騰も暴落も受け入れろ。統計が設計保証してくれるから。」という意味であると解釈しています。もちろんプラス側だけゲットできれば越したことはないですが、それができるなら私はインデックス投資をしていないと思います。
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1. 少しだけヒントを頂きました。
> ※なお資産価値の場合は積を取るので「対数」正規分布になり、
複利の場合の資産のばらつきについて、
理論的に考察したいと思っていましたが、
自分でやってもどうもうまく行きませんでした。
ここでヒントを頂いた気がします。
ありがとうございました。