ダイナミックレンジ(dynamic range、Dレンジ)とは再現可能な信号の範囲のことであり、ここでは1σ、2σといったバラツキの振幅を例える意味で用いています。
「
確率に「織り込まれる」ということ」において、インデックスの変動、あるいは資産価値の推移について「どのような経路を辿るかは未来から見ないと分からない」と書きました。では過去から見た未来、つまり現在から過去を見るとどうだったかを確認することで、想定すべきランダムウォークのDレンジを見積もります。個人的にも現実として何シグマのバラツキでここまで来たのか興味のある部分です。
MSCI JAPANとMSCI KOKUSAIの1980/01/Eから2014/12/Eまでの約35年分の推移に「波動砲」を重ね合わせてみます。FrequencyをMonthly、CurrencyをUSDとして日銀の米ドル円で換算します(この2指数は1969/12/Eからデータを取得できますが為替で律速する1980/01/Eからとします)。
【MSCI JAPAN(Gross)】r=6.8%/y、g=4.9%/y、σ=19.2%/y
【MSCI KOKUSAI(Gross)】r=10.8%/y、g=8.9%/y、σ=18.4%/y
【考察】
ここではそれぞれの指数の全期間の相加平均と標準偏差を用いて波動砲のレンジを描いています。設定するパラメータによってこのレンジ(特に中央値の傾き)はいかようにもできてしまうことに注意しつつ、今回はこの期間において「中央値からどれだけ上下にブレてきたか」に着目します。本来は「未来がわからない状態で」期待リターンとシグマを仮定して先を見通すためのプロットだと考えています。
この図を見て自分は次のように解釈しました。20年や30年の投資期間になってくると、リーマンのような「倍半分」変わりうる現象が1σ程度のバラツキとなる。逆に言えばリーマン程度の変動は割と簡単に起こりうる。
簡単と言ってもこの図の縦軸は対数であり、1σでも2倍から3倍のバラツキを持つためそのように見えるだけのような気もします。こうすると日本の80年代後半のバブルが約2.5σとかなり特異な現象であるように見えます。期待リターンに常識的な値を設定しておけば、ある時点の変動がどれだけ逸脱しているかを判断できると考えます。またここから得られる知見はバブル時のような特定期間の結果で中央値の傾きを決め資産運用を設計してしまうと大変なことになるということです。
一方、グロ株のようにかなり順調な成長を遂げる場合は、Dレンジは時間リスクにして±1σ程度を想定すればいいのではないかと考えます(自身の過去推移から標準偏差を求めているので自明とも言える)。
結局のところ、問題は「過去(=今)の時点で波動砲の照準をどこに合わせるか、つまり「期待リターン」を事前にどう見積もるか」に帰着します。それはまた別の議論だと思います。
検出器やセンサーにおいては一般にDレンジは広い方がよいですが投資においては狭い方がよいです。このようにランダムウォークは確率で記述できるので、日々の変動や数年に1度の急落などに一喜一憂せずどっぷり構えていたいものです。
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