「
積立のウラ問題メモ」における考察のように「積立」は万能ではありません。これらの裏問題に対する何らかの対策があってもいいのではないかと思います。
かなり前に「
積み立てロジックのアレンジ」という記事で積立を繰り越したらどうなるか、というのを検討しました。この時は有意差が見出せませんでした。しかも何をどうやったか忘れてしまいました(´~`;)
そこで先日のデジタルクーポンシミュレータのスクリプトを流用してリトライしてみたいと思います。
【方針】
①前月に対して指数が上昇したら何もしない(繰り越さない)、下落したら積み立て
②前月に対して指数が上昇したら次回以降に繰り越し、下落したら繰り越し分を合算して積み立て(以前やったのと同じ)
(確率分布乱数)
関数型:ガウシアン+ローレンツ関数(定義域:r±5σ)
相加平均(月率):0.407%(年率5%)
シグマ(月率):4.33%(年率15%)
期間:240ヶ月(20年)
試行回数:4096回
【結果】
普通に積み立てる場合を「Traditional」、①のアレンジ版を「Arrange1」、②のアレンジ版を「Arrange2」とします。まずTraditionalに対する「資産総額/元本(=収益率)」の相関プロットをArrange1、Arrange2で示します。Z軸はアレンジ版の積立回数(=元本)です。色のついた線は直線近似、白い線は1:1対応を表します。
◆収益率の相関プロット(Arrange1)
◆収益率の相関プロット(Arrange2)
Arrange1は近似線の傾きが1より大きく、収益の効率という意味ではTraditionalに対して有意な効果がありそうです。一方Arrange2はTraditionalとほぼ変わりません。そこでTraditionalに対する収益率の比の分布を求めます。
◆通常積立に対する収益率の比
今回の例ではArrange1は収益率の比で平均的に約2%の効果が確認できます(Arrange2は若干マイナス)。
しかしArrange1のZ軸の積立回数からわかるように、指数が上昇したら何もしないArrange1はリターンの値はよくなりますが元本が増えないことが懸念されます(240ヶ月に対して100前後)。また色の分布からは指数の上昇が大きくなるほど積立回数が減少する傾向も確認できます。そこで資産総額の分布を示します。
◆資産総額のヒストグラム
資産総額を1dB(デシベル)ごとに分割して求めています。規格化しているので例えば毎月の積立額を1万円とするなら横軸を1万倍してください。「Base」と書いた線は元本の平均値です。
Arrange1は資産総額の少ない方にシフトし平均的にはTraditionalの半分程度のようです。Arrange2はTraditionalとほぼ変わりません。
【まとめ】
設定する確率分布次第なような気はしますが、Arrange1はそこまで劇的に収益率が向上するわけではなさそうです。これだけ見るとインデックス投資のように右上がりを仮定する場合は元本(収益の割合ではなく絶対値)を増やす方がよいのではないかと思います。普通の機械的な定期積立がシンプルという結果です。
Arrange2は以前の結果とコンシステントであることが確認できました。Arrange2が効果がないというのは前回と同様「自己相関がゼロに近い変動をする確率分布では繰り越して下がるのを待ってもそれまでに上がってしまってトータルゼロ」ということなのではないかと考えています。
simの改善としては、今回積立裏問題の「暴落」はローレンツ関数を使用することで反映させたつもりですが、月率の範囲内なのでもっと極端な場合を想定するべきかも知れません。また「寄与率」の対策として、積立するかしないかの判定も前月からの上昇下落による1/0ではなくある程度のしきい値を持たせてもよいかも知れません。
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