FTSEのサイトに「指数革命」というletterがあることを知りました。揚げ足を取るつもりはないのですが、その中に「ん?」と思えるものがありましたので考えてみたいと思います。
その前にまずノンプライスインデックス(非時価加重インデックス)の状況を見てみます。この前の「レバレッジETFのいかずち」をlogにしてみます。
縦軸のレンジは10万円/月から10兆円/月です。対数だと「インドラの火」もたいしたことなさそうに見えてしまいますけど、例えばファンダメンタル加重のRNFI ETF(右上から2番目)は大佐がウンザリされるのも無理はない売買高であります。等金額加重の高配当70ETF(右上から22番目)は割とがんばっています。
本文に戻りますと、「株価と低相関な要素への加重が将来リターンへつながることも」の島なんですが、まず与式を確認します。
Rp=nE[riwi]
=nE[ri]E[wi]+ncov[ri,wi]
=EW+ncov[ri,wi]
共分散を積の期待値と期待値の積に分解した一般的な式が元になっていると思われます。ポートフォリオのリターンRpが均等加重のリターンEWと将来の期待リターンriとウェイトwiとの共分散の和で表されることが示されています。等金額は分配法則が成り立つと思われるので分解された期待値の積がそのまま均等加重のリターンEWになるのはリーズナブルだと思います(なおこの式からも(共)分散とリターンが同じ次元であることが示されています)。あるいは与式を移項して以下のように書いた方がわかりやすいかも知れません。
cov[X,Y]=E[XY]-E[X]E[Y]
→ncov[ri,wi]=nE[riwi]-nE[ri]E[wi]
→ncov[ri,wi]=nE[riwi]-EW
→nE[riwi]=EW+ncov[ri,wi]
→Rp=EW+ncov[ri,wi]
つまり等金額を超えることの定義が「将来の期待リターンriとウェイトwiに正の相関が存在すること」であることがわかります。期待リターンが高くなるものに重みづけすればポートフォリオのリターンRpも高くなることは自明です。共分散は正負を取りうるのでこの式だけ見ると等配分は「平均」であることがわかります。
これを元に本文を見てみます。
「共分散をプラスにさせないことには、ポートフォリオの運用成果は何も考えない等金額投資を上回ることはない。」
「「スマートベータ」と「逆数戦略」の両方を検証した結果、共分散は0に近づくことがわかった。」
「時価総額加重型インデックスと比べて株価による影響を低減することができたのが大きな理由だ。」
共分散がゼロとみなせる等金額に対して株価による影響は共分散がマイナスになる方向であり、「スマートベータ」と「逆数戦略」はそのマイナスを小さくすることができる、と読み取ることができます。
「時価総額加重型の戦略よりも良いパフォーマンスを得るためには「共分散をプラスに近づけるために、いかに株価と低相関な要素に加重付けを行えるかが重要になる」」
"プラスに近づける"という表現から、共分散はプラスにできないと考えて諦めているような印象を受けます。あきらめたらそこで試合終了ですよ。
letterの後半でインプリメンテーションコスト(流動性と取引コスト)に言及されていますけど、流動性でふるいにかけた後に最適化したタイムスケールで等配分すればよいと思います。
なにと戦っているのか知らないですけど、プラスに近づけることしかできないなら"何も考えない等金額投資"でいいんじゃまいか(´・ω・`)?
出典 ja.uncyclopedia.info
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