日経平均株価の配当込み指数は「日経平均トータルリターンインデックス」というものだそうです。「日経平均株価(配当込み)」ではないんですね。
ベンチマークとしてのインデックスは基本的に配当を含むことがあたり前だと考えています。しかしインデックスファンドのベンチマークの扱いは大まかに資産クラスや運用会社ごとに異なります(主に株式クラスは配当含まず、債券・REITは配当含む)。
以前配当込みベンチマークとファンド騰落率の差である「実質カイリ」を考察しました。つまり「トータルリターン同士の差分」です。インデックスファンドは(現地源泉課税引後)配当込み指数からの乖離が最小となるように運用されるのが理想であるという認識から、実質コストではなくそれを包含した実質カイリをリファレンスとするのがよいと考えています。
なお「日経平均トータルリターン・ネット・インデックス」というのもありましたので一緒に見てみます。その名から「Net(課税後配当込み)」だと考えられます。つまり「日経平均トータルリターン・インデックス」は「Gross(課税前配当込み)」、「日経平均株価」は「Price(配当なし)」ということになります。
【日経平均株価の時系列(2005/01/E-2015/04/EのMonthly)】
時系列データから以下の統計量をそれぞれ12ヶ月のタップで平滑化して求めてみます。
①ローリングリターン(ランニング相乗平均)の年率換算
②ローリングシグマ(ランニング標準偏差)の年率換算
③配当なしのノーマル日経平均株価とのローリングコリレーション(ランニング相関係数)
【ローリングリターン(ランニング相乗平均)】
【ローリングシグマ(ランニング標準偏差)】
【ローリングコリレーション(ランニング相関係数)】
統計量を表にまとめます。
【日経平均株価テーブル(2005/01/E-2015/04/E)】
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日経平均TR |
日経平均TRN |
日経平均株価 |
相乗平均(年率) |
ローリング平均 |
8.33%(+1.77) |
8.13%(+1.57) |
6.56% |
非平滑化平均 |
7.16%(+1.76) |
6.96%(+1.56) |
5.40% |
標準偏差(年率) |
ローリング平均 |
18.28%(+0.09) |
18.26%(+0.08) |
18.18% |
非平滑化平均 |
19.92%(+0.08) |
19.91%(+0.07) |
19.83% |
相関係数
(×日経平均株価) |
ローリング平均 |
1.00 |
1.00 |
--- |
非平滑化平均 |
1.00 |
1.00 |
--- |
「ローリング平均」というのが12ヶ月平滑化後の平均値、「非平滑化平均」というのが平滑化なし(通常の求め方)です。カッコ内は日経平均株価との差分です。まず平滑化の有無で結果が少し変わることがわかります。またシグマと相関は配当の有無でほとんど変わらず、リターンのみ配当分が見えています。この関係はリスクが存在する場合の相加平均と相乗平均との関係に似ています。
そこで12ヶ月平滑化後の年率換算した相乗平均から相関図をプロットすると以下のようになります(平滑化しないとノイジーなので)。
【日経平均株価の配当ありなしの相関(全体)】
【日経平均株価の配当ありなしの相関(拡大)】
近似関数の切片の「1.68%」、「1.49%」がそれぞれ課税を考慮する前後の配当成分だと考えられます(上のテーブルより低めに出ています)。この他にヒストグラムを用いても適切な関数でフィッティングすることで分布のセンターを配当の差分として分離できるはずです。
今回求められた配当が約1.7%前後ということで割と少ない印象です。配当は2%を超えていただけるとよいと思います。資産形成(複利)における配当のパワーは見くびってはいけないと思います。
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1. ファンドごとに違うベンチマーク
先進国株式クラスでそのような指数を採用しているのはニッセイ外国株式インデックスファンドですね。ただし、目論見書には配当込みベンチマークとしか記述がありません。
他社との比較において、ニッセイのトラッキングエラーが見かけ上小さく見えることから、投資家に余計な混乱を招いているとも言えます。
同じ資産クラスのインデックスファンドが全て現地源泉課税後配当込み指数を採用してくれればよいのですが。