複利2倍則は近似の仕方によって
「0.69」「0.73」
という数字が出てきます。「72の法則」はなぜ72かというとこれらに近い数字でかつ約数(因子)が多いからだと思われます。
「1,2,3,4,6,8,9,12,18,24,36,72」
nを時間、μをリターン(相乗平均)とすると、どちらの結果にも
nμ=ln2=0.69・・・ln(1+μ)
nμ=-1+√3=0.73・・・(1+μ)^n
のテイラー展開による近似誤差が乗っているので、実際のところどちらがより厳密解に近いのか考えてみます。
まず近似の誤差を確認します。
ln(1+μ)≒μ (μ<<1)
(1+μ)^n≒1+nμ+(n(n-1)/2)μ^2≒1+nμ+((nμ)^2)/2 (μ<<1、n>>1)
それぞれ「右辺/左辺」の絶対値を近似誤差として、μとnを振ったプロットを示します。
【近似誤差】
いろいろなnに対してμがいくつのとき誤差がいくつになるか、というものです。これを見ると青のラインのように「ln(1+μ)」はμが小さいところで近似式通りμに比例します(nによらない)。一方「(1+μ)^n」は例えばn=72の黄色の点ではμが小さいところからすぐに破綻してしまい、nが小さくなるほど大きなμまで許容できることがわかります。実際に72の法則として使われるのはnとμの積がおよそ72前後なので、nμ=72になる組み合わせをトレースしたのが黒のラインです。
つまり、青と黒のラインがクロスするμ=4%が69と73(72)の精度の分岐点だと推定できます。それよりμが小さいところでは「69」の方が精度が高く、μが大きくなると「73(72)」の方が精度が高いと言えると思います。
次に「nμ=○○」で求められるnが厳密解「n=ln2/ln(1+μ)」に対してどれだけずれるかを厳密解との比の絶対値で表します。
【厳密解との誤差】
近似誤差のグラフと似たような感じで青と黒の線が交差するμ=5%が分かれ目です。やはり近似誤差がnの誤差に直接乗ってくるようです。注目すべきはマゼンタの「nμ=72」がμが大きくても小さくてもバランスがよいという点です。
μの値に応じて比例係数を使い分けるのもよいと思いますが、銀行預金などの金利0.xx%でnを求める場合は別として、普通の資産運用の範囲内なら72を使うのが無難と考えられます。
72は69と73のどちらでも対応できるよい数字だと思います。
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