リバランスの確率分布をシミュレートしたいと思います。第四弾は構成比と変化率を二重トリガーとするリバランスを考えます。
【方針】
全体の期間を20年とし、構成比のズレが所定のしきい値を超えた場合をAトリガーとしてクリップしておき、次に少なくとも一つの資産の月単位のズレが所定のしきい値を超えた場合にBトリガーとしてポートフォリオを平準化します(AかつBが成立するケースのみ実行)。ポートフォリオは4資産の均等型でそれぞれのリスクリターンは異ならせています。リファレンスはリバランスなしとします。
(確率分布乱数)
関数型:ガウシアン80%+ローレンツ関数20%(定義域:r±5σ)
資産1 相加平均:年率6%、シグマ:年率20%
資産2 相加平均:年率5%、シグマ:年率15%
資産3 相加平均:年率4%、シグマ:年率10%
資産4 相加平均:年率1%、シグマ:年率2%
期間:240ヶ月(20年)
許容乖離幅:30%
許容変動幅:5%、10%、15%
試行回数:4096回
※コスト、課税は考慮しない
【結果】
リファレンスに対する分布を確認します。まず横軸にリファレンス、縦軸にリバランスとして資産総額の相関プロットを示します。Z軸(カラー)には平準化の許容変動幅を取っています。色のついた線は直線近似、白い線は1:1対応を表します。
◆資産総額の相関プロット
リバランスすれば傾きに変化はありますが、しきい値に対してはどれも同じような分布になりました。
◆資産総額のヒストグラム
しきい値によらず分布の幅がシュリンクしていることからリスクの維持という目的が果たされていることが確認できます。
◆資産総額の比
リファレンスに対する比においても許容変動幅依存はほとんど無いようです。15%で少し反応しているくらいです。
【考察】
上記プロットから主要な数値をまとめます。
◆資産総額の平均値と中央値とシグマ(カッコ内はrefとの比の平均値と中央値)
|
なし |
5% |
10% |
15% |
平均値 |
2.33 |
2.20(1.00) |
2.20(1.00) |
2.21(1.00) |
中央値 |
2.03 |
2.05(1.03) |
2.06(1.03) |
2.06(1.02) |
シグマ |
1.31 |
0.84 |
0.85 |
0.88 |
平均トリガー回数 |
--- |
8.5 |
6.9 |
4.7 |
◆所定値に対する確率分布
|
5% |
10% |
15% |
1<リバランスあり/リバランスなし |
57.1% |
56.7% |
55.2% |
0.5<リバランスあり/リバランスなし≦1 |
42.1% |
42.4% |
44.0% |
リバランスあり/リバランスなし≦0.5 |
0.9% |
0.9% |
0.8% |
【考察】
シグマの値からDualトリガーでもバラツキを抑えるという効果は確認できました。許容乖離幅がある場合とない場合(リバランスシミュレータ(β1))とで大きな違いはないようです。許容変動幅に対して有意差が見出せないのは少々解せないですが、コストや課税の影響(リバランス回数)が小さくなるように変動幅をある程度大きく設定することができると考えることにします。
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