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インデックス・ドライバー

統計とリスクを考える良い機会

市場が割と変動し大味な展開が続いています。程度としては大したことはありませんが、ここ数年がユルかったので統計とリスクを考える良い機会と捉えています。この先も「まだだ、まだ終わらんよ」となるかならざるかは私にはわかりませんし、将来的に何があっても対処できるように備えは必要だと思います。
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統計は「リスク」を「何シグマ」といった変動の「確率的な大きさ」として扱います。前々から「リスク」を端的に表すカラフルなグラフを開発することをブログのモチベーションとしています。これまでの考察を踏まえて「リスク」の表現を改良してみました。リスク定義の再考と表現の提案として絵を描いてみたいと思います。

考察の対象はMSCI KOKUSAIインデックス(Monthly/Gross/USD/1969/12/31-2015/08/31)を日銀のドル円(Monthly/1980/01/31-2015/08/31)で円換算して1980/01/31=1として規格化したものとします。

【単位時間あたりのリスク(ライン・ドット版)】

◆バラツキの概念
ひと月単位の変化率を時系列方向に並べたもの。縦軸は「変化率の相加平均からの差分を標準偏差シグマで規格化した値」です。対応するドットの色はその大きさの変動が確率的に何パーセントの幅で起こりうるかを表しています。いわゆる「±1σで68.3%」のあれです。個人的には「確率σ(シグマ)」と呼んでいます。統計学的には信頼区間と言うかも知れません。指数が時間方向にとある確率をもってバラつきながら推移してきたことが確認できます。上下に行くほど点の密度が小さくなり頻度(確率)が低下することがわかります。

◆リスクの規格化
グラフ右端の2015年8月程度の変動(-1.8σ=93.4%)は過去に割と起こっていることがわかります。ここでは変化率を%ではなく1σの何倍かで考えています。1σが何%に相当するかさえわかっていれば後は確率で議論できます(正規分布に従うと仮定するなら変化率の絶対値スケールが異なってもシグマで規格化することで同じ確率分布で議論できる)。ゆえに変化率の1σを把握しておくことは重要だと思います。このケースでは相加平均=0.84%/月、相乗平均=0.69%/月、標準偏差=5.3%/月です。

◆リスクの設計
例えば自分のアセットアロケーション(ポートフォリオ)の標準偏差が「x%」であることさえ知っておけば、95.4%の確率で平均値から「±2x%」、99.7%の確率で「±3x%」に収まることがわかります。マージンとして3σとれば実用上問題ないと思われますので、資産運用では自分が耐えられる減少率を例えば30%としたら、1σ=30%/3=10%くらいに収まる配分にしておくのが設計としてリーズナブルと考えています。

◆確率関数の形式
垂直方向の写像(ヒストグラム)が一般に正規分布(ガウス分布)になると言われていますが、グラフを見ると想定される頻度以上で±5σ(99.99994%)の変動が起こっていることも事実です。後述の複利(時間方向の誤差伝搬)を考えると単位時間あたりの変化率だけで議論することは困難ですし、この「テイルリスク」は正規分布だけでは定式化できませんが、統計学の中心極限定理により、ランダムサンプリングされた後の指数関数(対数正規分布)ではそれほど気にすることはないと考えています。またシミュレーションを行うときなど、テイルリスクの記述には個人的にはガウシアンとローレンツ関数(コーシー分布)とのコンボリューションを用いています。

【時間方向の合成リスク(ライン・ドット版)】

◆時間リスクの概念
複利による積分リスクです。バラツキに時間の概念をマージした、いわゆる時間軸方向の誤差伝搬法則。個人的には「時間リスク」と言っています。何シグマの確率的な定義は上記の単位時間あたりのリスクと同じです。色が変わらない0σ=中央値(赤)、±1σ(水色)、±2σ(青)のラインに対して、色を変えながら波動砲を斜めに横切るラインが平均値(赤→黄→緑)です。波動砲は1980/01/31-2015/08/31における相乗平均と標準偏差をパラメータとしてエクスポネンシャルで描いています。そして色を変えながら「うねうね」しているのが指数です。指数は確率的な所定範囲内をランダムウォークしながら右上がりで積み重なってきたことがわかります。中央値の見積もりにも依存しますが、この指数の場合はほぼ±1σのレンジで推移してきたことが確認できます。

◆相乗平均の喪失
ここで重要なのはシグマが無ければ投資結果は中央値の赤いラインではなく、グラデーションの平均値のラインだということです。この平均値と中央値の差を生み出しているのがリスク(シグマ)であり、これを私は「消失リターン」や「リターンの消失」と呼んでいます。ゆえに市場にはムダな変動を自重してもらいたいと考えています。

◆誤差の加算
指数が標準偏差でバラつきながら複利(掛け算->√n倍)で積み重なることで、資産価値の絶対値が大きくなり、時間が経つほど同じ変動率でも変動幅は大きくなります。波動砲の広がり(確率振幅)がそれを表し、「長期投資でリスク(資産額の不確定性=ブレ幅)は増大する」ことのゆえんとなります。それでも長期的には「期待値ー消失リターン」のラインを中心に高周波、低周波の振動を繰り返しながら右上がりでやってきたことがわかります。

◆確率的ダイナミックレンジ
グラフ右端の2015年8月程度の変動(-8.9%)は過去のバラツキに比べて長期的にほとんど影響ないことがわかります。2008年のリーマンでさえ±1σのレンジに収まっています。上のグラフでリーマン付近は-2σ、-4σといった変動が頻繁に起こっていますが、下のグラフで過去からの累積としてそれを見るとせいぜい+1σから-1σに落ちる程度と解釈できます(単位時間あたりと累積で確率シグマの捉え方が異なる)。逆に言うと長期投資ではこれくらいの変動を見込んでおかないといけない。それでもスタート位置よりは高いところにいるので長期投資に意味が無いということにはならないと考えます。注意したいのはこの波動砲はどこをスタート位置にするか、期待値をどう見込むかで変わってくることです。

◆統計量の推定精度
このMSCI KOKUSAI INDEXくらい素直な変動なら「1/√n」によりシグマのみならず期待リターンもそれなりの精度で推定できると考えています。例えば標準偏差=5.3%/月で427ヶ月なので、標準誤差は5.3/√427=0.26%/月であり、相乗平均=0.69%/月に対して2.7σ(99.3%)程度のマージンがあることがわかります(グロスインデックスなので課税、経費率引き後はこれより厳しくなります)。

◆相加平均の確率
平均値の色の変わり方から平均を取りうる確率は時間とともに減少していくことも重要だと思います。これもリスクの弊害です。リスクは+2σなどプラス側で当たればよいですが、逆の-2σといったハズレも同確率で存在するだけでなく、定常的にリターンとその確率を蝕んでいく困りものです。個人的にはリスクはコストと同列に扱うべきものであると考えています。

【考察】
これらを見ると例えば2015年8月の変動は、

・リスクリターンによる統計的な確率分布からは想定内の変動
・数ヶ月前の水準に戻っただけ

これだけ上がったり下がったりを繰り返しているわけですので、あんまり目先の変動に一喜一憂したくないものです。投資期間が短いと元本割れする確率は統計上小さくありません。最近の下落もここ数年の投資環境が良すぎただけと考える方が気の持ちようとして良いと思います。統計的な思考を身につければ、事前に確率に基づいて冷静で論理的な行動が取りやすくなると思います。

【まとめ】
このような長期投資およびインデックス投資の統計的な議論は量子力学の確率解釈に通じるものがあると考えています。

粒子の振舞も、市場の変動も、不確定なものを断定することはできない(波動関数の存在確率=確率振幅)、あるいは観測しないと結果が確定しない(波動関数の収縮=デルタ関数)とする立場のため、確率で議論する必要があると考えます。

私が「波動砲」という言葉を割と頻繁に用いるのは「FF5」が好みだからだけではなく量子力学の「波動関数」に引っ掛けているためです。

今回の考察で考えたような背景に基づいて「リスク」を管理あるいは制御することこそが資産運用ではないかと考えています(もちろんセンスのある人は予想して当てればいいと思います)。例えばアイフォンやマックブックの設計マージンや量産バラツキもこれらと同じ統計の考え方で管理されていると思いますので、資産運用でも同様の手法を用いればよいと考えます。

今回の二つの表現に込めたことは以下です。

◆とある確率をもってバラつくこと
◆時間と確率振幅との関係
◆中央値の推移と平均値との関係

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