積立において投資時期が早い、遅いによって複利を効かせられるタイムスケール、すなわちリスクの確率振幅を回収できる時間が変化します。これに対して時間とともに積立アセットアロケーションのリスクを逓減させていくとどうなるか検討します。
【方針】
2資産の積立でリスクの高い方のウェイトを減らし、リスクの低い方のウェイトを増やす。リファレンスの通常積立は積立額を常に等分するとします。図示すると以下のようになります。一度積み立てた後はそのままとします。
(資産1の確率分布乱数)
関数型:ガウシアン+ローレンツ関数(定義域:r±5σ)
相加平均(月率):0.407%(年率5%)
シグマ(月率):4.33%(年率15%)
(資産2の確率分布乱数)
関数型:ガウシアン+ローレンツ関数(定義域:r±5σ)
相加平均(月率):0.083%(年率1%)
シグマ(月率):0.58%(年率2%)
期間:240ヶ月(20年)
試行回数:4096回
【結果】
普通に積み立てる場合を「Traditional」、逓減版を「Arrange1」とします。まずTraditionalに対する「資産総額/元本(=収益率)」の相関プロットを示します。Z軸は積立総額としています(常に240)。色のついた線は直線近似、白い線は1:1対応を表します。
◆収益率の相関プロット
資産価値が大きくなるようなケースではArrange1で効果が見られます。
◆通常積立に対する収益率の比
収益率の高い側での裾を引いていることがArrange1の効果が高いという相関プロットを反映しています。逆に反対側の裾を引くケースも見られ、逆効果になるケースもあることがわかります。
次に資産総額の分布を示します。
◆資産総額のヒストグラム
資産総額を1dB(デシベル)ごとに分割して求めています。規格化しているので例えば毎月の積立額を1万円とするなら横軸を1万倍してください。「Base」と書いた線はトータルの元本(240ヶ月=240)です。
高リスク資産を初期に多く投資したArrange1の方がヒストの幅がやや広くなることが確認できます。つまり時間があっても大きくしたリスクを回収するのは確率的に難しいという印象を受けます。
【まとめ】
Arrange1はTraditionalに対して分布が右の方にシフトすることを期待していたのですが、左右に広がるという結果になりました(パラメータの指定にもよります)。リスクにさらすということは相乗平均の減価と裏返しでもありますので、「時間があるのでリスクを取る」というのは単純にはいかないということがわかりました。
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