このプロットはたまたま流れ着いた日興アセットマネジメントの資料にインスパイアされたものです。確率関数をn=1、σ=15%で固定し相加平均rを乱数で振ってモンテカルロ風にドット打ちしています。
【考察】
資料の要旨としては、一般的にいう「S/N(シグナルノイズ比)」がインデックス投資や長期投資でも重要ですよ、ということだと思います。ここでは主に「リターンがマイナスになる確率がS/N(金融でいうシャープレシオ)の関数になっている」ということが述べられています。インデックス投資で考慮するべき統計量は期待リターンだけではなくリスクだけでもなく両者の比である、という重要な考え方です。
ただし先方は単年の元本割れ確率を正規分布にしたがって求めたものと考えられ、時間方向の積算まで考慮されているかは資料からは読み取れません。またS/Nのマイナス側がありませんので上記ドット絵では追加しています。このグラフで特筆すべきは、たとえS/Nがマイナスでもシグマによるバラツキによって元本割れしない確率はゼロではない、ということです。例えばS/Nが-1.2でも1年後にマイナスに沈まない確率は10%(1-0.9)ほどあることがわかります。
しかしそのマイナスのS/Nが時間方向に積み重なっていくとマイナスに沈む確率が増大していきます(時間積分まで考慮した確率解釈については関連記事を参照ください)。ゆえにインデックス投資ではできる限りS/N(リターン/リスク)を向上させることが設計として妥当な方針と導かれます。
【まとめ】
上記で示されるような背景があるから、定量性に無頓着な時価加重ではなく統計特性に配慮した指数が有効であり、指数の進化こそが運任せのマイナスサムゲームを回避して勝利を掴むために必要なプロセスになると考えています(あとはリターンがシグマ(いわゆるリスクプレミアム)に因らないといったことが示されるとよいと思います)。
個人的にはメディア関係は定性的な感覚論が主流で確率に言及した資料をほとんど見たことがありませんでした。定量的な根拠と手段に基づいてロジカルにインデックス投資を構成する、という当たり前のことが我々一般ユーザーにも降りてきたということでしょうか。
定量考察や定量議論なしでインデックス投資を論理的と据えるのはあり得ません。ゆえに金融機関はこのようなインデックス投資で有益な、しかし業界外では常識的な知見を一般に広めてほしいと思います。
「ノーロジック・ノーインデックス」=「論理性が無ければインデックス投資に非ず」
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