【均等配分の代名詞・白馬三山(しろうまさんざん)】
※ちなみに3つの峰の左端が白馬鑓ヶ岳(しろうまやりがたけ)です。標高2903m。名前の如くキレイな青空にヤリを突くカッコいい山です。
イーマクシススリムの「全世界株式」には2種類あるようです。イーマクシススリム全世界株式「3地域均等型」と「除く日本」、どちらにしましょうかね。
「3地域均等型」は「eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)」でTOPIX、MSCIコクサイ、MSCIエマの均等配分、「除く日本」は「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」でMSCIオールカントリーワールドインデックス(コクサイとエマージングの時価比率)です。どちらも運用管理費用は0.142%(税抜)で同じです。
考え方はいろいろあると思います。
・期待値(リターン)を最大化する
・シグマ(リスク)を最小化する
・S/N(シャープレシオ)を最大化する
・市場平均(時価比率)に賭ける
など
やはり私としては「平準化」により不確定性やバラツキを低減させたいです。そうすると以下のような思考実験を考えてみます。
日本株、グロ株、新興株がそれぞれ将来的に2倍or1/2倍になったと仮定します。未来が予測不可能という立場に立った場合、統計特性を等しいと定義するのはリーズナブルです。また各事象は独立とします。その組み合わせは2^3=8通りになります。「除く日本」のグロ株と新興株の比率は2018/4/Eの月報から87:13としています。
【テーブル】
|
日本株 |
グロ株 |
新興株 |
均等配分
(3地域均等型) |
時価加重
(除く日本) |
均等/時価 |
未来① |
2倍 |
2倍 |
2倍 |
2 |
2 |
0% |
未来② |
2倍 |
2倍 |
1/2倍 |
1.5 |
1.8 |
-17% |
未来③ |
2倍 |
1/2倍 |
2倍 |
1.5 |
0.7 |
116% |
未来④ |
2倍 |
1/2倍 |
1/2倍 |
1 |
0.5 |
100% |
未来⑤ |
1/2倍 |
2倍 |
2倍 |
1.5 |
2 |
-25% |
未来⑥ |
1/2倍 |
2倍 |
1/2倍 |
1 |
1.8 |
-45% |
未来⑦ |
1/2倍 |
1/2倍 |
2倍 |
1 |
0.7 |
44% |
未来⑧ |
1/2倍 |
1/2倍 |
1/2倍 |
0.5 |
0.5 |
0% |
|
|
|
|
|
|
|
平均値 |
|
|
|
1.25 |
1.25 |
22% |
シグマ |
|
|
|
43% |
66% |
|
Max |
|
|
|
2 |
2 |
|
Min |
|
|
|
0.5 |
0.5 |
|
元本割れ確率 |
|
|
|
13% |
50% |
|
【グラフ①(均等と時価の相関)】
【グラフ②(均等と時価の比)】
【考察】
均等配分(3地域均等型)と時価加重(除く日本)では、8パターンある未来の平均値、Max、Minは等しくなりましたが、そのバラツキ(シグマ=標準偏差)と元本割れ確率は均等配分が小さくなりました。
これは、時価加重は2になるパターンが2つあるが均等配分は1つしかなく、逆に時価加重は0.5になるパターンも2つあり均等配分は1つであるといったところにその特徴が見て取れます。これが「均等配分はバラツキ(不確定性)が小さい」ということを示していると考えます。数学で一般的に示される概念を具体的な数値として具象化したものです。
ちなみにグラフ①に太い白線を縦横2本同じ位置に引きましたが、均等の点が縦2本の直線に乗っているのに対して時価の点は横2本の直線より外側にいます。「バラツキ(≒アタリハズレの大きさ)」を視覚的に表現しています。
統計を無視して組み合わせても効果的なノイズ低減が見込みにくい、という単純な「ミーンバリアンス」の帰結とも思います。インデックス投資においてシグマは相乗平均の減価につながるため、その成分を可能な限り低減させることが重要と考えています。
上記はウェイト配分(アセットアロケーション、ポートフォリオ)によるバラツキの議論です。このほか、以下のように「時価加重型インデックスファンド」と「固定配分型バランスファンド」の違いとしても考察することができると思います。
この2つの「全世界株」を見て感じるのは、リバランスという観点に対してやはりインデックス投資の理屈と実際はチグハグしているということです。「除く日本」の全世界株インデックス(MSCI ACWI ex J)の場合は時価比率なのでグロ株と新興株の割合が時間とともに変わっていくということになります。一方でインデックス投資はリスク管理のため「3地域均等型」のようにリバランス(ウェイト管理)しましょう、ということになっている。
これを矛盾と言わずなんという!
もちろん均等配分(3地域均等型)であっても個々のアセットは時価加重インデックスであるため内部の銘柄のウェイト管理は困難ですし、全体で見た国や通貨別の配分も偏っています。
インデックス投資はそういう矛盾や不十分な点があることを把握した上で進めていく必要があると考えています。特に「平均」という言葉の意味が一般の感覚と異なるのは注意したい。
グロ株の大部分を占める米国はこれからも地球の「価値」を吸い上げていくでしょうから、グロ株にかけるのも一つの判断だと思います。日本株、グロ株、新興株という割り当てがそもそも内部の「数」や「時価」を度外視した括りになっているから仕方ないというのもあります。そういう「偏り」がある意味パッシブ投資の常識かもしれません(管理せず市場が決めた結果に従う。換言すれば格差を積極的に許容する)。現実的にはリアルタイムで変わる対象の管理は困難ですから最もラクなやり方でしょう。でも私はもう少し客観的な位置からインデックス投資を実践したいと考えてきました。
【まとめ】
全世界株は資産形成のコア(心臓)となりえます。
「相加平均」の特性と「平準化(≒バラツキ低減)」の観点から私は「3地域均等型」にしたいと思います。インデックス投資は「平均を狙う投資」なんだから、普通の平均(相加平均=均等配分)に割り振るのは自然な流れですし、定量的にも理にかなっていることが確認できました。
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