【モデル】
等口数投資の平均取得価格は単純な指数平均(株価平均)になります。その「指数の単純平均(定口積立)」と、時間方向の等金額投資である「時間均等配分投資(定額積立、ドルコスト平均法)」について検討してみます。
冒頭のグラフのようなギザギザの指数変化を仮定します。
時間の単位は年を想定しています。指数は時間ゼロを1として、時間が1から20において定額と定口を20回積み立てた場合の指数に対する損益率(指数値と平均取得価格との比)の比、すなわち平均取得価格同士の比を求めます(以下、平均取得価格比とします)。
【平均取得価格比・リスク依存(20年後)】
今回試した試行ではすべてが指数平均に対して正になっています。これは調和平均であるドルコスト平均法が「調和平均≦相乗平均≦相加平均」という数学的な性質から相加平均に対して必ず小さくなることが期待でき、それが数値計算で確認できたと考えています。
その量は現実的な変動範囲、標準偏差シグマにして20%と仮定すると、元本に対して1%からたかだか4%程度であるようです。
消失リターンの減価分を相加平均でキャンセルして「シグマによる変動成分のみ」で考えた場合、ドルコスト平均法の効果は消失リターン「-(σ^2)/2」の半分程度と推定されます(グラフで青とマゼンタがほぼ等しい)。
さらに相加平均をゼロとして消失リターンで指数値が減価する場合、シグマ20%程度までは「-(σ^2)/2」のオーダー、それ以上では急激に大きくなるようです。指数の変動より指数の単純な減価のスピードが勝るようです。指数の減価分はシグマ20%程度までは消失リターン「-(σ^2)/2」の半分程度しか平均取得価格比に寄与しないということですね。
また、横軸を相加平均リターンとして依存性を確認しています。
【平均取得価格比・リターン依存(20年後)】
相加平均=シグマによる消失リターンの位置をミニマムとして放物線のような形になりました。つまり時間均等配分投資はリターンが高くなっても低くなっても平均取得価格比の効果が高まることを示しています。
最後に時間依存です。
【平均取得価格比・時間依存(シグマ20%)】
指数値が一定の場合は平均取得価格比も一定値に収束する。また、指数値が上がっても(相加平均リターン5%=黄色)、下がっても(相加平均リターンゼロ=オレンジ)、平均取得価格比は時間とともに増大することがわかります。
【注意点】
平均取得価格比を消失リターンと比較していますが、消失リターンが複利(指数関数)で効いてくるのに対して平均取得価格比はその時点での単なる比率です。依存性も複利のような強烈なものではなく、消失リターンに対して影響は小さいものである点は注意が必要と考えています(例えばシグマ20%、消失リターン約2%で相加平均ゼロとすると、20年後には指数値が-34%まで低下するのに対して平均取得価格比は2%程度しか変わらない)。
つまり定額積立(ドルコスト平均法)による平均取得価格の低減効果より、リターンの大きさそのものや「リスクによるリターンの減価」の現象の方がよほど資産形成に効いてくるということです。
なお、これらはあくまで「率」しか見ていません。平均取得価格の比(元本に対する損益率の比)です。等金額、等口数それぞれの投資額の違いには触れていません。
「額」で見ると、等口数投資(指数平均)は右上がりでは等金額投資より投資額が多くなるので損益のパーセンテージは低くなりますが損益の金額は大きくなる傾向があります。逆に右下がりでは投資額が少なくなるのでパーセンテージは低くなりますが損益の金額も小さくなる傾向があります。
この点は把握しておく必要があると思いますが、非課税口座や確定拠出年金が時間均等配分投資であり金額の上限も定められているのであまり気にしても仕方がないと考えています。
【まとめ】
時間均等配分(ドルコスト平均法)の平均取得価格に対する効果を確認できました。私がずっと考察してきた「時間を固定した資産・銘柄方向の均等配分」が有効なら、「時間方向の均等配分」にも効果が見出せるのは不思議なことではありません。逆もまた然りです。均等配分はインデックス投資において親和性の高いポートフォリオであると考えられます。
今回は数値計算で済ませてしまいましたが、定式化できる概念だと思います。どなたか検討していただけると助かります。
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