運用や隠れコストの寄与を分離するためマザーファンドを共有し、かつ信託財産留保額が異なるインデックスファンドを用いて、信託財産留保額の効果を検証します。
STAM/eMAXISで差が顕著だったGREITをまず探しましたが適当なモノが見つからなかったので三菱UFJ投信の
★eMAXIS新興国株式インデックス(0.63%/0.3%)
★DC新興国株式インデックス(0.609%/0%) ※2012年3月30日以降0.5775%
(新興国株式インデックスマザーファンド)
を採用します(DCですが問題ないと仮定します)。
eMAXIS側を基準とし、①eMAXISの騰落率、②1日騰落率の差分和、③年換算した差分和(差分和の傾き。1年あたりのパフォーマンス差)をプロットします。信託報酬の差は除外してあります(1日騰落率に還元)。直近の運用報告書から比較に必要そうなデータも記載します。
◆eMAXIS(2012/01/26)(AVG9920円)
信託報酬 62円(0.63%)
売買委託手数料 8(0.08%)
有価証券取引税 4(0.04%)
保管費用等 24(0.24%)
合計 98(0.99%)
(組み入れ比率 99.6%)
◆DC(2011/05/12)(AVG10839円)
信託報酬 80円(0.74%)
売買委託手数料 9(0.08%)
有価証券取引税 3(0.03%)
保管費用等 24(0.22%)
合計 116(1.07%)
(組み入れ比率 97.8%)
信託財産留保額のないDC側が劣るという結果になりました。しかも年換算差分和と留保額の差(傾き)がほぼ一致しています。
信託報酬は考慮し、マザーファンドが共通なので隠れコストもほぼ同等です。他にベビーファンド側の組み入れ比率とかいくつかファクターが絡みそうですがそれ以上の有意差がありそうです(組み入れ比率差1.8%->基準価額が10%変動したとしても全体に与える影響は0.18%程度)。
オフセット成分だと思っていた留保額が信託報酬や隠れコストと同じゲイン成分であることに衝撃を受けました。しかもプラスの寄与かマイナスの寄与かは全く逆です。負担するコスト的にはマイナスのオフセットだが効果はプラスのゲイン(複利)で効いてくる優れものという感じです。
特に長期投資になればなるほど他人の売買の影響を受けるので、留保額は信託報酬と同じかそれ以上に重要な意味を持つと考えてもよさそうです。またこの結果からは留保額は1年でキャンセルできることになります(リバランス周期より短いのがポイント)。
年換算差分和が留保額とほぼ等しいことが自明なのか私には判断できませんが、たぶん必要なコストを見越して留保額を決めるのだと思います。あるいは毎日純資産額の1/365の解約があれば傾きが一致するのかも知れません。
留保額は正義の味方とは思っていましたが通りすがり程度の認識でここまで効果があるとは思いませんでした。実際に検証すると実感が湧いてくるとともに、これまでの理解の甘さを反省します。いつも設定額が同じSTAM/eMAXIS新興株/新興債ばかり比較していてその重要性に気づかなかったのが痛いです。。。
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