運用報告書の費用明細から信託報酬や実質コストを求めますが、その算出方法についてきちんと考えてみます。また日々の信託報酬の引かれ方についても考えてみます。
1年をn日、t日後の基準価額をf(t)、年率リターンをr、信託報酬率をaとすると
f(t)=f(t-1)×(1-a/n)×(1+r)^(1/n) (t=1,2,…,n)
f(0)=10000
またt日における費用をc(t)とすると
c(t)=f(t-1)-f(t-1)×(1-a/n)
=f(t-1)(a/n)
という式で日々の基準価額と信託報酬を定義します。
ここで簡単のために1年をn=12(=月)、年率リターン0%、信託報酬率10%のボッタクリファンドを考えます。
A:単位期間内の平均基準価額(青の面積の時間平均。正確には0から11までの時間平均)
B:費用の合計(オレンジの面積)
信託報酬率=B/A
我々が入手できる情報は費用が引かれた後の基準価額と費用合計です。これらを用いると、信託報酬(実質コスト)の算出は「運用報告書の費用合計を前期末日から当期末日の"前日"までの全基準価額の平均で割る」のが正しいと考えられます(今回わかったことですが前日の基準価額に対して先に信託報酬が引かれてから当日のリターンがかかっているようです)。
したがって、私の期首と期末の基準価額の平均による計算では期間中の変動で誤差が生じるだけでなく、基準価額のサンプリングが1日ずれていたということになります。まあでもオーダー計算ではこれでもよいとします。
また以前から1日あたりの信託報酬は「×(1-信託報酬率/日数)」で引かれているのか「×(1-信託報酬率)^(1/日数)」で引かれているのか気になっていたのですが、今回のsimでつじつまが合うのは前者のようです。ちなみにリターンは複利(相乗平均)なので「×(1+年率リターン)^(1/日数)」で換算します。
その他、例えば年率リターン80%、信託報酬率20%と強調してみると、
わかりにくいですが基準価額が上がるにしたがって費用(=信託報酬)も増えています(比率は同じ)。つまり基準価額が上がれば金融機関もおいしいということがわかります。
余談ですが分配が絡むとどうなるのでしょう。分配金が引かれた普通の基準価額と再投資基準価額というのがあります。分配には興味ないのでマジメに計算しませんが信託報酬は前者にかかりますよね。そうすると分配があると金融機関は収入が減ってしまうということになります。でも分配というだけで販促になるから問題ないか。
ということでこのように基準価額を用いて実質コストを計算していましたが、下記の水瀬さんのタイムリーなコラムで革命的な衝撃を受けました。信託報酬率(%)はあらかじめ決まっており、費用明細の信託報酬(円)は基準価額の変動が反映された積分値になっているのでその他コスト(円)との比で信託報酬率(%)を換算するのが最も正確で簡単で一意に決まります。いやぁ、気づきませんでした。お恥ずかしい限りです(´~`;)
(関連記事)
信託財産留保額の効果(新興株編)
投資信託は割高?