過去何度か2資産の合成リスク最小配分や、等σ相関ゼロを仮定したn資産の合成リスク最小配分(=等配分)を計算しています。今回は任意のσ、相関におけるn資産の一般形を考えます。
2資産ならW2=1-W1で変数を1つに減らせるので普通に解けますが、3資産以上になると一般の制約条件つき極値問題になります。そこでラグランジュの未定乗数法を用います。またσfの形では平方根が煩わしいのでσf^2で極小値を求めます(∵√xが単調増加関数より)。
考えやすいようにまず3資産で式を立てていきます。
σf^2=W1^2σ1^2+W2^2σ2^2+W3^2σ3^2+2r12W1W2σ1σ2+2r23W2W3σ2σ3
+2r31W3W1σ3σ1 ・・・①
W1+W2+W3=1 ・・・②
ここで①をf、②の左辺-右辺(=W1+W2+W3-1=0)をgと置いて次の式を定義します。
f'=f-λg (λ≠0)
停留点(微分がゼロになる点)を求めると、
∂f'/∂W1=2W1σ1^2+2r12W2σ1σ2+2r31W3σ3σ1-λ=0
∂f'/∂W2=2W2σ2^2+2r23W3σ2σ3+2r12W1σ1σ2-λ=0
∂f'/∂W3=2W3σ3^2+2r23W2σ2σ3+2r31W1σ3σ1-λ=0
∂f'/∂λ=-(W1+W2+W3-1)=0
ここで式を整理します。普段は共分散を相関係数で表していますが見やすくするためrijσiσj=σij(=σji)と置き換えて、
W1σ11+W2σ12+W3σ13=λ/2
W1σ21+W2σ22+W3σ23=λ/2
W1σ31+W2σ32+W3σ33=λ/2
W1+W2+W3=1
上の3本の式から規則性が見えます。よって、ここから行列を用いて考えます。上の3本と下の1本から、
(諸般の事情でTeXではないのですがさすがにTeXのようには描けないですね)
最後の2式の分母はスカラーで分子は変数分のベクトルです。また共分散行列の行列式(det)がゼロになる場合は適用できません。これは例えば2資産ならr=±1が該当します。
ここで相関ゼロを仮定すると共分散行列は対角行列になり容易に解くことができます。対角行列の逆行列が対角成分の逆数になる性質を利用して、
Wk=(1/σk^2)/(1/σ1^2+1/σ2^2+・・・+1/σn^2)
=(1/σk^2)/(Σ(1/σi^2))
σの自乗の逆数の比になるようです(σii=riiσiσi=σi^2に戻しています)。ここからさらに等σを仮定するとWk=1/n(等配分)になります。
また一般形において等σ等相関(r≠0)を仮定しても対角成分と対角以外の成分がそれぞれ等しいので等配分になることがわかります。
大数近似で等配分がシグマ最小となることは合理的ですし、ポテンシャルの極小であることは復元力が働くと考えることもできます。
最後に、2資産は過去にやったことがあるので3資産で具体的な式を求めておきます。
行列式は分母分子でキャンセルされるので逆行列の成分(余因子)のみ考えると、
行列なんで絶望的な計算量になります。何百何千銘柄のインデックスファンドはおろか8資産のアセットアロケーションさえ見当がつきません。
それなら等配分でいいじゃんと思うのです。
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