信託報酬の低さが魅力のETFへリレー投資を検討しています。しかし必ず収益分配を行い課税されるのがここにきてやはり気になっています。
海外ETFでは二重課税を取り戻すために確定申告をしなければならず(めんどい)、内外ETF関係なく課税後の分配金を自分で再投資しなければなりません(めんどい)。
しかも課税されると複利効果が薄れるのは周知の通りであり、低い信託報酬をキャンセルしてしまうのではないかという懸念があります。
VWO連呼してきましたが真剣に考えてみたいと思います。
【(i)税制(2014年以降)】
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売却益 |
売却益 |
配当/分配金 |
配当/分配金 |
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海外 |
国内 |
海外※1 |
国内 |
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海外ETF |
非課税 |
20% |
10%※2 |
20% |
※2海外配当分は外国税額控除可能
(要確定申告) |
国内ETF |
ーーー |
20% |
10%※3
(30%?)※6 |
20% |
※3海外配当分は外国税額控除可能?
※6外国籍ETFは30%との情報あるため追記 |
投資信託 |
ーーー |
20% |
10%※4 |
20%※5 |
※4海外配当分は外国税額控除不可
※5無分配ファンドを選択可能 |
※1:海外源泉徴収課税。米国株式など(債券は非課税が多い)。
※2:米国ETFは米国から見て海外で課税されている可能性あり(下記)。
※3:基本的に国内ETFも※4の投資信託と同様海外の配当課税は免れないと思いますが、iシェアーズETFに限れば梅屋敷商店街のランダムウォーカーで言及されていた回避可能かもという件。ただし配当金受取方法の違いによって非課税口座の配当/分配金非課税とのorになる可能性あり(そしたら20%の分配金非課税を選びますかね)。ただ国内ETFにも現物、先物、リンク債、JDR(1582)と課税内容が違いそうなものが多い。
※4:運用報告書(ex.外国株式インデックスe)にも配当課税として乖離要因に記載あり。
※5:これが投資信託のETFに対する重要なアドバンテージだと考えられる。
情報をいただいた以下の記事に気になることが書かれています。
『米国籍ETFで米国からみた海外株に投資している場合、分配金の原資になる株式配当金に対し米国株以外は一般に源泉徴収されている。この組み入れ株式配当金に対する海外源泉税を日本の居住者であるETF購入者が取り戻すことのできるような税制上の仕組みは存在しないものとみられる』
米国ETFは①現地←米国、②米国←日本、③日本で三重課税されているということでしょうか。すると海外ETFをバッファとする投資信託(エグゼアイなど)は、ファンドを経由しているため外国税額控除も適用されず3連打をもろに受けることになりそうです。あともしかして、例えば新興株IFはADRを多く採用していますが、その税制によってはこちらも三重課税の可能性はないでしょうか。
【(ii)分配課税される低コストETFと無分配インデックスファンドはどちらがよいのか】
上記※5の検証で以下のパターンを考えます。
・無分配:無分配で最後の売却で譲渡税が引かれる
・分配再投資:インカム分を分配課税再投資して最後の売却で(インカム分以外の)譲渡税が引かれる
・分配受取:インカム分を分配課税受け取りして最後の売却で(インカム分以外の)譲渡税が引かれる
これを以下の考え方でシミュレートします。
・リターンをキャピタルゲイン(r1)とインカムゲイン(r2)に分離する
・インカムゲインを全額分配する
・分配課税はインカムゲインのみにかかる
・分配課税を国内分(Z2)と海外分(Z3)に分離する
・信託報酬(s)、譲渡税(Z1)まで引かれた最終値を算出
・リターン、信託報酬の掛かり方は(1+r)x(1-s)ではなく(1+r-s)
r1=3%、r2=3%として計算します。その他のパラメータはグラフのラベルに(s/Z1/Z2/Z3)の順で表示します。
このsimでは1582やVWOの③0.18%分配課税ありは①0.63%無分配に対して有利という結果になりました。なお①と②が分配再投資の差です。また④は海外ETF外国税額控除ありです。
これをn年間の実質年率に直します。
当初のリターン6%に対してこれだけ低下してしまうことになります。信託報酬の等しい無分配①と分配再投資②を見ると分配課税分の複利で時間とともに差が広がっていきますが、譲渡税があるためインカム3%×税率20%=0.6%もの差にはならないようです。一方分配再投資間(②~④)を見ると信託報酬差(0.45%)やインカム3%×税率10%=0.3%とほぼ同等のロスになっています。
ほぼ傾き1のリニアになるようです。条件によって切片が0.05~0.3%と幅があり、分配課税ありファンドは無分配ファンドに対して信託報酬でそれだけ上回っていないと選択肢に入らないということになります。例えば0.18%の分配課税ありファンドは0.43%の無分配ファンドに相当するようです(3%3%で30年運用した場合)。
よって新興株では今のところETFが有利ですが、低コストと言われるETFでも分配課税があると実質的な信託報酬が増加し、無分配IFの信託報酬は割と高いところまで許容できるようです。しかもIFは投信ポイント制度があるため0.1%程度差が広がりますし、信託財産留保額の効果も無視できません。一方ETFは1582に限ればSBI証券の貸株対象外(1681は0.1%)であり、売買手数料もかかります。
特にグラフから読み取れることは、オレンジを基準にリターンが高い場合(青)は切片が大きくなり、時間が短くなる場合(黄、緑、茶)は切片が小さくなっています。これは複利の効果が強く出る条件ほど分配課税側のロスが大きく無分配側の信託報酬が高くても取り戻せることを意味します。
ただし、上で述べたように、例えば0.05~0.3%という数字はインカム3%×税率20%=0.6%より小さく、分配再投資間(②~④)で見た結果と異なります。無分配も最後には譲渡税が引かれてしまうのでインカム課税分そのまま有利というわけにはいかないようです※。
※分配再投資は分配課税分が複利で不利になりますが、再投資により分配分が元本に加わるので最後の譲渡税はキャピタル分だけになります(インカム分の課税が早いか遅いかの違い)。ただし譲渡税のようなオフセットゲインより複利の方が効いてきます。
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