リターンの異なる資産をずっと持っていると当初の配分から変わってきます。よって重みづけが変わることによって当初の値からずれてきます。
例えばリターンが5%と10%の資産を最初に半分ずつ投資すると合成リターンは7.5%ですが、リバランスなしで10年後のトータルの複利リターンを計算すると7.76%と大きくなっています。図示すると、
①5%と10%を5000円ずつ別々に計算してから足したものと、②7.5%を10000円で計算したものです。
これはリターンの大きい方の配分が支配的になり、加重平均の加重が連続的に変わってくるためです。またリターンが大きいほど複利の増え方も速くなります。
なので、いつも計算している合成リターンは「毎年同じ配分だと毎年この値が期待できる」という意味になります。合成リスクも同じことが言えます。配分も変われば合成リスクも変わるのでリバランスしようということになります。
リターンが増えるならリバランスしない方がいいじゃんと思われるかもしれませんが、リバランスの目的はリスクを維持することと、ミーンリバージョンで元に戻ろうとする心理学を利用しようということで目的は別になります。
この絵は青が8資産均等型バランス、緑が8資産をバラで均等に持った場合、赤が8資産の個別リスク・リターンを単純平均したものです。
それぞれの線の下の方が2012年10月の始点で右の方が2013年8月の終点です。これを見ると、リターンのピーク(2013年5月20日)が青に対して緑は微妙に大きくなっています。そしてこの暴騰の始まりからリスクも大きくなっています。つまりイケイケの時期はリターンも増えているがリスクも増えていることが確認できます。これに対してバランス型は常に配分を調節していたためリスクを維持できたと捉えることができます。
さらに、そのピークの上がって下がる過程において、青と緑はほぼ重なっていますが赤は広がった状態になっています。このような場面でも相関係数が効果を発揮していることが見て取れます。
このように、リターンが増えるということはリスク(標準偏差)も大きくなるという側面を忘れてはいけないです(リターンが大きいとは一般に変動が大きいということです。かつその資産の加重が増えることのアンドで全体の標準偏差も大きくなります)。
以上により、以前バラ売りファンドとバランス型ファンドの対決を見たときに半年間の暴騰でバランス型がリターンの面で大きく負けていたのはおかしくない現象ということになります。
◆バランス型のメリット
・常に計算通りのリターン、リスクが想定できる
・バラ売りに対してリスク低減が可能
・リバランス不要(バラ売りと混ぜることでリバランス耐性を持たせられる)
・資産配分のリファレンスとして用いることができる(特に均等型)
◆バランス型のデメリット
・バラ売りに対してリターンが下がりがち
・大きく変動した時のリバランスの機会を逃すことになる
リターンが下がりがちと書いたのは、同じスタート位置から一方的に上昇下落する場合は負けてしまいますが、上昇と下落を繰り返す場合はその限りではないからです。ただ基本的に投資は右肩上がりを仮定するのでデメリットとしています(その裏でリスクも下がりがちになるのはメリットです)。
なお、以前確認した「
リターンとリスクの時間換算」も、合成リターンと合成リスクの場合は個々の資産を個別に換算してから和をとって割り戻すような手順をとるのが正確ということになります。
バランス型を利用する際などは注意が必要かと思います。
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