以前VWOの基準価額と取引価格とのカイリを見ました。それをVTでもやってみます。
NAVを米国バンガードから、Closeを米国Yahooからもらってきています。基準価額と取引価格なので米ドルのままの比較です。
【カイリの時系列】
【NAVとCloseのヒストグラム】
期間は2008/07/08-2014/02/28で、標準偏差、相加平均、相乗平均は以下の通りです。
Daily[単位%] |
σ |
相加平均 |
相乗平均 |
NAV |
1.59 |
0.0277 |
0.0150 |
Close |
1.71 |
0.0293 |
0.0146 |
カイリ |
0.47 |
0.3140 |
0.3129 |
グラフではリーマン後の安定感は抜群のように見えます。リーマン後の2010/02/24(VWOの時に比較した1681の上場日)から数値化すると以下のようになります。
Daily[単位%] |
σ |
相加平均 |
相乗平均 |
NAV |
1.14 |
0.0423 |
0.0358 |
Close |
1.22 |
0.0433 |
0.0358 |
カイリ |
0.17 |
0.2065 |
0.2063 |
数値でもリーマン後の安定感が確認できます。ところで上の数値にも表れているように、ETFは基準価額(NAV)の変動が取引による外乱で増幅されると思うのです。NAVをfn、トータルの変動であるCloseをfcとすると、外乱fpはfcとfnとの差分になると考えられます。
fp=fc-fn
NAV、Close、外乱のシグマをそれぞれσn、σc、σpとし、誤差伝搬にあてはめると
σp^2=|∂fp/∂fc|^2×σc^2+|∂fp/∂fn|^2×σn^2+2|∂fp/∂fc||∂fp/∂fn|rcn×σc×σn
=σc^2+σn^2-2×rcn×σc×σn
rcnはσcとσnとの相関係数です。時系列データからNAVとCloseに関するパラメータはわかっているので、
σp=(σc^2+σn^2-2×rcn×σc×σn)^(1/2)
=(0.0171^2+0.0159^2-2×0.964×0.0171×0.0159)^(1/2)
=0.46[%]
上で時系列から求めたカイリのσd=0.47[%]とほぼ一致します。これが市場の投資家が自分たちでかき混ぜている分になると考えられます。
対数正規分布の相加・相乗平均の関係から、この外乱シグマにより相乗平均が微妙に小さくなるはずなので、累積確率50%の中央値は低下します(期待値との差が広がります)。
これはETFの非合理性のひとつかと思います。しかし外乱シグマがNAVの変動に対して相対的に小さく、さらに低コストがそれをねじ伏せれば実用上問題ないとも言えます。自乗和のルートでしか効かないのであまり影響ないにしても、ETFは人間心理という不必要な誤差要因を内包していることは認識しておくべきだと思います。
また上の表からわかるように、リターンである相乗平均の値はσの2ケタ落ちです。我々長期投資家の求める日々の変動はこのように小さいものに過ぎないので、踊り狂う市場に惑わされずどっぷり構えていたいものです。
最後に、rndをNAVの変化量とカイリとの相関係数とすると、
rnd=0.076
VTにおいてはほぼ相関はないと考えられます。強いて言えば、この値が正なので基準価額が下がるときを狙えば基準価額に対して割安で買える可能性がわずかに高くなると考えられます。
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