リスクに関する以下の考察について、当時から考え方やツールも変わっているのでリファインしたいと思います。
簡潔にするため今回も資産1と資産2という2資産の合成リスクを考えます。 合成リスクは誤差論における誤差伝搬法則により相関係数を用いて以下のように表されます。また合成リターン(相加平均)は単純な加重平均とします。
このように合成リスク(分散)はウェイト(=リターン)の二次関数(放物線)で表されることが分かります。ちなみにn資産の一般形では次のようになります。
また「
合成リスクの標準形で遊んでみる」等で考えたように、合成リスクの極小値をとるウェイトおよびその時の合成リスクを個々のシグマと相関係数の関数として求めることができます。
これらを踏まえ、資産1の割合(W1)と資産12間の相関係数(r12)、および合成リターン(R)を軸として合成リスク(σf)をプロットします。
◆ケース1
リスクが異なる資産の場合(シャープレシオも異なるとした)
|
リスク |
リターン |
SR |
資産1 |
20% |
6% |
0.3 |
資産2 |
10% |
4% |
0.4 |
【三次元版(正面)】
【三次元版(斜め)】
【二次元版(コントア)】
【二次元版(ライン)】
【考察】
二次元版(ライン)は三次元版における相関係数一定の断面を切り取り、ウェイトを合成リターンに置き換えたものです。それぞれのラインが相関係数ごとの「有効(効率的)フロンティア」に相当します。
①r12=1のラインが、両者を単純に加重平均した合成リスクです。
②r12<1の場合、同じリターンにおいて①よりも合成リスクが必ず小さくなることがわかります。
③特に、合成リスクが10%を下回る領域はリスクの低い資産2を単独で持つ場合よりも、リスクの高い資産1を組み入れた方がリスクが小さくなることを示しています。
④「極小値」のラインは上記の「R'」と「σf'」をプロットしたものです。確かに放物線の極小値をとっていることが確認できます。
◆ケース2
リスクが等しい資産の場合(シャープレシオは異なるとした)
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リスク |
リターン |
SR |
資産1 |
20% |
6% |
0.3 |
資産2 |
20% |
4% |
0.2 |
【三次元版(正面)】
【三次元版(斜め)】
【二次元版(コントア)】
【二次元版(ライン)】
【考察】
①r12<1の場合、合成リスクが個々のシグマより必ず小さくなることがわかります。
②「極小値」のラインがR=5%(W1=W2=50%)で一定であるように、等配分は相関係数によらず放物線の谷底を通ることが確認できます。
③特に、r12=0かつ等配分は合成リスクが1/√2(=14.1%)になります。この1/√nの考え方は時間方向の合成リスク(時間リスク)でも用いられます。
なお、これらを一般のn資産の場合に適用できる形に拡張したものが以下の有効フロンティア曲線の考察になります。n資産においても分散がリターンの二次関数(n次元でなく2次元)で表されることが分かります。
また今回の話はリターンの最適化を考慮していません。これをリターンを含めたシャープレシオ(リターン/リスク)として議論したのが以下の考察です。
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