あえて誤解を生むような表現にしてみました。
はじめに、ニッセイをおとしめるつもりはありません。事実を確認します。
近似線は前回の3年リターンと同じ33ファンドで求めています(ニッセイを入れてもほとんど変化なし)。またニッセイは3年標準偏差が得られないので色はホワイトにしています。
【グロ株(MSCIコクサイ)】y=-1.19x+23.55(n=33+1)
【結果】
1年の場合の近似線からのバラツキは1σで0.087%です。ニッセイのズレは-0.329%であり3σを超えています。
設定初期で不利な面はあるかも知れませんし、このプロットには①経費率とリターンの算出期間のズレ、②経費率の算出方法、による誤差が含まれていますが、ちょっとたまたまでは済まないような差であると感じます。それがおそらく運用によるものではないかと考えています。
【考察】
コストは重要でわかりやすい指標です。しかし、「コストがすべてではなく、他に考えることはある」ということを言いたいのです。「他」とはコスト以外の因子や、特定ファンドに関する1値ではない複数の集合、つまりバラツキ等です。
ニッセイは今回マイナス側に振れたので心証が良くなかったかも知れませんが、これがプラス側だったらどうだったでしょうか。ポートフォリオや現金比率起因ならどちらに振れることもあり得ます。しかもまだ日が浅いので3年もすれば平均化されてバラツキに収まるかも知れません。
理想は現地源泉課税引後配当込み指数からのトラッキングエラーが(プラスにもマイナスにも)最小になること。コストはその下方乖離要因のひとつ。その他の成分の要因解析は必要。
ただし個人的にはトラッキングエラー以上に「連動する指数そのもの」の「統計的性質」が重要だと考えています。アセットアロケーションが運用成果の大半を決めるのと同じ理屈がインデックスのポートフォリオにもあてはまると考えるからです。またトラッキングエラーに現れない分配課税ロスやETFの市場乖離等も考慮が必要だと思います。
ところで「トータルリターン」が分配のために登場した感があるのは残念ですが、トータルリターンはインデックス投資にも重要な考え方だと思います(むしろあたり前と言える)。インデックスファンドはトータルリターンが指数と一致してくれることが理想です。
先日このプロットを求めた理由は、「コストが重要と言うけれど、具体的に何にどれくらい影響があるの?ホントにリターンと1対1のリニアな関係なの?」ということをバラツキを含めて確認したかったからです(そのデータを集めていてたまたまニッセイに気づいただけです)。
私が「市場とその周辺が定性的から定量的にならないか」と書いたのは、例えばニッセイ外国株式インデックスという単体名の良し悪しだけが一人歩きするような定性的な状況から、コストがリターンに影響を与えるという"自明"なことをバラツキという定量性とともに議論するような方向に移行することを指しています。逆に言えばコスト差を埋めてしまうようなバラツキが存在することを前提に行動したいということです。
それはある意味「固有名詞を出さない抽象的な概念」と言ってもいいかも知れません。それゆえ、何がどうなるかを無責任に予想や断定したがるこの業界では、統計や定量性、論理性が軽んじられてきたのだと思います。しかし、そもそも投資で使われる「リスク」もバラツキ(標準偏差)そのものです。シグマはリターンのブレ以外にも適用できるのだから積極的に使っていきませんか、という話です。
バラツキまで考えればコストがリターンに影響を与える因子のひとつに"すぎない"ことがわかります(もちろんコストは負の固定因子である点が特別であり、重要とされる理由であることは理解しています)。またシグマによりニッセイの振る舞いが確率的な許容範囲内であるかを判断することができます。
ここで強調したいのは、ニッセイのずっこけ方を累積騰落率差で数値化するだけ(結果を示すだけ)では定量的と言うには充分ではなく、原因や背景、バラツキを数値や数式で論じて初めて定量的と言えると考えています。もっと言えば対策までロジカルに示すことができればなお良いと思います。
【まとめ】
FOY2014の一連の流れの中で、今回もニッセイを例に取りましたが、個々のファンドがどうであるかは主要件ではありません。低コストで注目が集まるニッセイグロ株が「定性的から定量的へ」の一石を投じてくれたことが重要だと考えています。
私としては、このような相関線が引けて統計的性質を考察できる定量性、論理性がインデックス投資のエッセンスであり、資産形成の手段という枠を越えて存在する理由だと考えます。
(関連記事)
1. 無題
この部分に強く共感しました。
今まで無意識的に流していたようで、はっとさせられました。
自分でもいろいろ計算してみたいと思います。