◆相加平均リターンの場合の複利2倍則
72の法則に適用するリターンの値が相加平均リターンの場合は、対数正規分布の「平均値」の確率を取ります。この確率は「シグマによるリターンの消失」によりシグマがゼロでない限り必ず50%より小さくなるため、μn=0.72から求められる時間nでは不足しがちであると考えられます(シグマ≠0の場合)。
相乗平均リターンが中央値の50%であるのに対して、相加平均リターンである平均値がどのような確率で起こりうるか数学的に考えます。
μを"相乗"平均、σを標準偏差シグマとするとn年後の対数正規分布の「平均値」は
exp[μ'n]=exp[(μ+(σ^2)/2)n] ・・・(A') ※相加平均μ'=μ+(σ^2)/2
n年後の資産価値は
f(n)/f(0)=exp[(μn+a×σ√n)] ・・・(B')
よって、n年後に「平均値以上になる確率」はA'=B'より、
平均σ:a=(σ√n)/2
平均確率:F(a)=1-[1+erf(a/√2)]/2 ※erf(x):誤差関数
つまり相加平均において72の法則が計算通りの時間で2倍になる確率は、リターンによらずシグマと時間のみに依存することがわかりました。特にシグマと時間が大きいほど平均以上になる確率は低下していきます。これを図示すると以下のようになります。
【2倍以上になる確率の時間・シグマ依存(3D)】
【2倍以上になる確率の時間・シグマ依存(2D)】
【時間依存(シグマ=15%の断面)】
【シグマ依存(n=30の断面)】
代表的な値を抜き出して表としてまとめます。
【平均確率(一覧)】
【平均σ(一覧)】
【まとめ】
72の法則は複利の要求時間を概算する上で便利ですが、確率的には絶対でないことに注意する必要がありそうです。相乗平均の時点で5割の確率でしかないこと、さらに平均値を取りうる確率(相加平均の場合の72の法則)が5割に満たないことは割と重要な事実かと思います。
なお、この結果を均等配分の考え方に水平展開すると次のような議論ができるのではないかと考えます。
等配分は相加平均そのもの
→確率で50%より小さい
→勝率で50%より大きい
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